真贋の協奏曲
陶器の茶碗などを一目見ただけで真贋を見抜き、
その価値が判ってしまうんでしょうが、
そういう目を持たない人にとっては、
見ただけでは全く判らなかったりします。
素人考えで『古い物ほど価値がある』と思いがちですが、
必ずしもそうとは限りませんよね。
それが証拠に『賞味期限切れの食品』に価値を見出す人は少ないですよね。
結局はその物の値段を見て、高ければ
『あ~これは価値があるんだな~』と実感するしかないわけですよね。
骨董店に入ると、同じような壺が二つ置いてあって、
片方は『1万円』、もう片方は『11万円』と値札がついてるんですね。
形も大きさも色も、見たところ全く同じなのに、
値段に10万もの差がある。不思議に思って店主に、
「親父さん、この二つの壺って全く同じに見えるんだけど、
どうして値段にこんなに差があるの?」
「あ~それはね、こっちの壺には私のヘソクリが10万入ってるから」
激しく納得という感じですよね。
『ストラディバリウス』や『ガルネリ』といえば、
物によっては何億円もする事で知られている、
言わずと知れたバイオリンの名器ですよね。
ところがこれらの名器が、現代のバイオリンと大差ないとする実験結果を、
先日パリ大学の研究者らが発表したようですね。
21人の一流バイオリニストに協力してもらい、
楽器がよく見えないように眼鏡をかけた上で、
ストラディバリウスや現代のバイオリンを演奏してもらい、
どれが一番いい音か尋ねたところ、
安い現代のバイオリンの方が評価が高かったんですね。
価値の判る人間が判断しただけに、これは大変な結果ですよ。
もっとも、木材や塗料、製造法などを分析してみても、
ストラディバリウスが特段優れているという
明確な理由は見つからないそうですね。
じゃあ今までの『常識』は何だったの?という話になってしまうんですが、
名器の歴史や値段が、聞き手の心理に影響を与えているのではと予想されていて、
『値段が価値を作る』という典型的なケースになりかねませんよね。
これを聞いて私も、
自宅の倉庫に放り込んだままになっている
18世紀に作られたストラディバリウスを5本、
粗大ゴミの日に捨てにいった夢を見ましたけどね。
よく宝石や絵画なんかの偽物を売りつけられて
大損をするなんて話を聞きますが、この結果から考えてみると、
名器と言われる楽器の偽物を掴まされても
バレない可能性があるという事になりますよね。
さらに考えてみると、『これは音が悪いから贋作だ』とされ、
それを承知で買った『偽ストラディバリウス』が、
実は本物だったなんて事もあるかもしれませんね。
注文したラーメンの底に
10円玉が沈んでたら店主に文句を言うでしょうが、
沈んでいたのが1万円札だったら
黙ってるであろうというのと同じ心理ですかね?
問題は、沈んでいたのが500円玉の場合は、
文句をつけるべきか黙ってもらっておくか、
ラーメン屋でハムレットの心境になっちゃうでしょうね。
微笑亭さん太