そんなセッションな
『福寿稲荷ごりやく市』にて、寄席に出演してきました。
地域活性化のための歩行者天国的な催しで、
その通り沿いにある小屋での落語会です。

地元にお住まいの耳鼻科医、
駒久家南朝さんに声をかけていただいて、
午前、午後の2回公演です。

(第1部)
『イクメン』 駒久家南朝
『長屋の花見』 微笑亭さん太
(第2部)
『再就職は楽し』 微笑亭さん太
『茶の湯』 駒久家南朝
以前にも一度呼んでいただいた会ですが、
割と雑然とした場で、人の出入りもあり、理想的な環境ではありません。
お客さんの数もあまり期待できないと思ってましたが、
2回とも20数名入って下さり、予想以上に良いお客さんでした。

会場入り前、南朝さんが
「今日はね、ナマ下座でいくから」
「えっ、どなたか見えるんですか?」
「それがね、僕もよく判らないんだよね…」
聞けば数日前、南朝さん宅に年配の御婦人が見えて
『お囃子の三味線を弾かせてほしい』と直談判されたとの事。
じゃあ、ちょうど寄席がありますから
弾いてもらいましょうか的な流れになったようです。
「南朝さんは、その方の事をご存知なんですか?」
「いやいや、全く知らないんだよね」と言いながら、
南朝さんが箱から何か取り出してるもんですから、
見ると太鼓でした。
「…南朝さん、これは…?」
「いやね、三味線だけじゃ寂しいだろうと思って、家にある太鼓を持ってきたんだよ」
「はあ…あの、誰が叩くんですか」
私の問い掛けに満面の笑みで御自分を指差す南朝さん。
「えっ、南朝さんは下座の経験とかあるんですか?」
「いや、全くないけど、三味線に合わせて適当に叩いてれば大丈夫でしょ!」
…南朝さんって、治療同様…いや、治療以外は、
こんなにアバウトな方だとは知りませんでした。
「本当に大丈夫ですか?」
「大丈夫、大丈夫。大切なのはリズム感だよ。
リズムさえ合っていれば何とかなるんだから」
…小市民寄席の総踊りの『かっぽれ』で、
ひとりだけ逆方向に回転した『前科』のある南朝さんの言葉には、
説得力のかけらもありませんでした。
そしてさらに気になる事がひとつ。
「あの…僕が上がる時は南朝さんが叩くとして、
南朝さんが上がる時には誰が叩くんですか?」
私の問い掛けに満面の笑みで、私を指差す南朝さん。
え~っ!?私!?
いやいやいや、それはダメでしょう。
太鼓なんて触った事もないのに、
稽古も打ち合わせも一切せず、いきなりぶっつけ本番って、それはもう
『無眠さん、栄歌さん、まきぞうさんに体育館裏に呼び出されるレベル』の
とんでもない御法度ですよ。
しかし、初下座でテンション上がりまくってる南朝さんは
一切聞く耳持たず(笑)太鼓を叩く事になりました。

しかも自分が一席終えて下りてきたら、
お囃子の途中で南朝さんから太鼓を代わるという、
まさに『バチが当たる』ような事までしたわけです。
それでも何とか無事に(?)終えられてよかったです。
ところで、三味線を弾いて下さった御婦人なんですが、帰り道、
「あの御婦人は、一体誰だったんですか?」
「さあ、僕も最後まで判らなかったね~」
…結局、『太鼓のド素人が、謎のおば様とセッションした』
という事実だけが残った寄席でした。
でも太鼓、ちょっと楽しかったな~(笑)
微笑亭さん太