脳あるタカは退治隠す
頭蓋骨は半インチの切開のみという内視鏡による手術は無事成功したんですが、
そこで仰天の事実が発覚しましてね。
というのも、腫瘍の正体は【胎児】でして、骨、髪、歯がしっかりと確認されたそうですね。
双子の妊娠において、
特に二卵性である時によく聞かれる【バニシング・ツイン】という現象がありましてね。
これは双子を妊娠するも片方がうまく育たず、
初期の段階で母体に吸収されて結果として一人だけが誕生する事でしてね。
そして、その胚がもう片方の赤ちゃんの体内に宿ってしまう事が、稀に発生するんだそうですね。
彼女は実は双子だったようで、その現象が起こったという事なんですね。
「桃太郎の脳を調べてみたら、鬼の赤ちゃんが入ってたらしいね」
「そう、いわゆる【鬼胎児】ってやつだね」
人間の脳に関しては、まだまだ判らない事が沢山あるわけでして、
やはり海外の話ですが、四十四歳の男性が足を怪我して病院へ行き、検査をしたんですね。
そうしたら男性の脳が、本来あるべき量の半分しかなかった事が判ったんですね。
半分しかなかったら生活に支障をきたすのではないかと思うんですが、
IQが僅かに平均より下回るだけで、特に異常は見られなかったそうですね。
半分しかないのに【普通】という事は、この方、脳が全てあったら、絶対に天才だったんでしょうね。
「脳の空いたスペースには何があるんですか?」
「優しさ、ですね」
要するに【バファリン】みたいな方という事でしょうね。
この一件から『人間の頭の半分は、小物入れとして使える』という事が証明されたと言えますよね。
そうかと思うと、アメリカの大学で【ほぼ完全な人間の脳】を、
実験室で培養する事に成功したなんてニュースもありましてね。
これも以前、米オハイオ州立大学の教授が極小の人間の脳を、
ほぼ完全な形で培養する事に成功したそうでして、
脳の成熟度は、妊娠五週目の胎児に相当するそうですね。
ついに人間の脳を人間自身が作り出すという、SFの世界になりつつありますが、
これは【神の領域】に足を踏み入れる行為だと取られるかもしれませんよね。
「人の脳を培養するというのは、やってもいい行為ですか?」
「倫理的に【脳】!」
なんて言われちゃいそうですよね。
しかし、こういった流れが加速していくと、自分の思った通りに、
脳みそを入れ替えるなんて事も出来るようになってしまうかもしれませんよね。
自分のオーダーと違う脳を入れられたというので、
クレームをつけにきたお客さんがいたりしてね。
「【タケヤ味噌】入れてくれって言ったのに、間違えて【マルコメ味噌】入れただろ?」
なんてんで、こんなクレームが寄せられるのは、近い将来かもしれませんよね。
微笑亭さん太