草りきった大地
アフリカ大陸の北部一帯に広がる世界最大の砂漠に【サハラ砂漠】というのがあります。
面積は八百六十万平方キロメートルで、
世界の砂漠面積の約二十六%を占めると言いますから、広大な砂漠ですよね。
ところがこの【サハラ砂漠】という名称ですが、サハラという言葉そのものが、
アラビア語で【砂漠】を意味しているんですね。
ですから【サハラ砂漠】というのは【砂漠砂漠】と言ってるのも同然ですから、
考えてみるとおかしな名称ですよね。
日本における砂漠の類と言えば、
鳥取県鳥取市の日本海海岸に広がる広大な海岸砂丘【鳥取砂丘】というのが有名ですよね。
山陰海岸国立公園の特別保護地区に指定されていて、
南北に二・四キロ、東西に十六キロに広がっていて、
観光可能な砂丘としては日本最大なんですね。
一九五五年に国の天然記念物に指定されて以来、鳥取県のシンボルの一つとされてましてね。
今、この鳥取砂丘が、雑草の増加による【緑化】に悩まされているそうですね。
『緑化に悩まされている』という言葉自体がおかしな感じがしますよね。
普通は『緑を増やそう』と言われるわけですが、
こと砂丘に限っては、緑が多くなっては困るんですね。
約百五十ヘクタールの鳥取砂丘には、
厳しい自然環境に適応したハマゴウなどの【砂丘植物】が自生する一方、
一九七〇年代頃から、イネ科のチガヤなどが飛来し繁殖したもんですから、
一九九〇年代には、砂丘全体の約四十二%に雑草やマツなどが広がっちゃったんですね。
それにより、砂が風で動いてできる現象【風紋】や
【砂簾(されん)】という砂丘独特の現象が見られにくくなり、
景観にも深刻な影響が出たんですね。
ですから砂漠を維持し、緑化を防ぐためにも、除草をしなければいけないわけです。
・・・砂漠を維持するために草むしりをしなくちゃいけないというのは、
これはもう【人工砂漠】という感じですよね。
しかもここ数年は雨や雪が多く、
特に昨年の夏は、前線停滞による異常な長雨が雑草の成長を促進し、
緑化に拍車をかけているそうで、除草が追いつかず、
雑草がどんどん濃くなっているそうですね。
そこへもってきて『除草作業をするボランティアの減少』という事が拍車をかけています。
砂丘の除草作業はボランティア頼みだったんですが、
二〇一九年はボランティア約三千七百人が集まったんですが、
二〇二〇年はコロナ禍で地元企業の参加が減るなどし、
約千九百人しか集まらなかったんですね。
昨年は八月上旬の活動が中止となり、さらに下回る見込みですから、
関係者は『砂丘本来の景観が失われてしまう』と危機感を募らせてるんですね。
「砂漠を維持するというのも大変なんだね」
「世の中の砂漠の多くは、自然破壊ではなく塩害が原因だったりするから、
塩害を起こせば、自然と砂漠は維持できるんじゃないの?」
「そうか。じゃあこれからは、大相撲を毎場所、鳥取砂丘で行う事にしよう」
力士たちの撒く塩が、鳥取砂丘の救世主になる日も近いんじゃないでしょうかね。
微笑亭さん太