聞くは一時の美味
コロナ禍では、最も厳禁とされる事の一つでしたよね。
できれば一人で黙~って言葉を発さず食べるのが理想と言われ推奨されてきました。
友人との外食も思い切って行けなくなった昨今、
自宅で一人、ポツンとご飯を食べる機会が増えた方も多いと思いますが、
独りぼっちの、いわゆる【孤食】が味気ないのは、
多くの人が嫌と言うほど実感しているでしょうね。
しかし今回、名古屋大学の研究により
『孤食の際は、誰かが話しているのを聞きながら食事すると、ご飯が美味しく感じられる』
という事が明らかになったんですね。
これは面と向かって人と会食しなくても、
動画内の音声で十分な効果が得られるとの事なんですね。
「なるほど。確かにテレビで『孤独のグルメ』を見ながら飯食べると、
ひとりでも飯が美味いのは確かだよな」
こういうのを『孤食のグルメ』と言うそうですけどね。
研究チームは大学生を対象とした実験を行ったんですが、
被験者の目の前にモニターを置き『新製品で、それぞれ味が違う』とだけ伝え、
お皿に盛ったポップコーンを九十秒間、好きなだけ食べてもらったんですね。
それと並行して、モニターには映像が映し出されるんですが、
一つは【物だけが映っている映像】もう一つは【物と人が映っている映像】でして、
それぞれを音声アリ・ナシで提示したので、被験者には計四回の試食をしてもらったんですね。
その結果、人が映っているかどうかにかかわらず【人の音声】が提示される時に、
ポップコーンがより美味しく感じられ、摂食量も増える事が判明したんですね。
モニターに映る人数を増やしても結果は同じで、どの映像条件でも、
『人の音声が入るか否か』が結果を大きく左右していたそうですね。
つまりは『人の声が孤食を美味しくする調味料になる』という事ですね。
「そうか、人の声が聞こえた方が、食事が美味しくなるのか」
「へえ~。だったらさ、お前が飯を食う時には必ず、俺がそばで喋っていてやるよ」
「いや、いい。お前の声を聞くと、それだけで飯がマズくなるから」
日本では年々、一人で食事せざるを得ない高齢者が増加していて、
高齢者の孤食の増加は、うつ病発症のリスクとも関連しており、非常に深刻な問題なんですね。
その中で、モニターや通話機能を活用することで、
孤食によるメンタルヘルス問題の予防が期待できるそうですね。
「これからは飲み会も徐々に増えていくだろうから、孤食になる事も少なくなっていくだろうね」
「そうかな・・・俺なんか飲み会に行っても、誰も話し相手がいなくて、
いつも独りぼっちなんだよ・・・周りから聞こえてくる楽し気な会話が、常に俺を苦しめるんだ・・・」
まあ中には、そういう方がいるかもしれませんね。
微笑亭さん太