瓦版砲はあるのか?
速報ニュースがネットで流れる今、印刷物である新聞は、
どんどんと売れなくなってきてますよね。
機動力という点では、
どうしてもネットに勝ち目はないですから仕方ないわけですが、
ネットには真実でないニュースも拡散されてしまいますから、
これからの新聞は、その信頼性で勝負していくしかないかもしれませんね。
時代劇などで見かける
『てえへんだ、てえへんだ!』と言って街角で売っている【瓦版】というと、
江戸時代の新聞のようなイメージでとらえられてるとは思いますが、
瓦版=新聞というには、少し疑問があるようですね。
瓦版には大きく分けて二種類あり、
まず一つ目は、夕方頃に町に出て手拭いを頭に巻き、
竹の棒などを持って軽快に売り歩くというもので、
我々が抱くイメージは、まさにこれですよね。
この瓦版屋は三、四人の囃子方を連れ、歌うようにゴシップネタを売り歩くそうでして、
これは【新聞】というより【文春砲】をぶっぱなしそうなにおいがプンプンする感じですよね。
扱ってる記事も
『三つ目の人魚が越中湾に出た!その人魚は脇に三つの目があり、
顔にも目がある事から、何と五つの目を持っている。
さらに頭が一メートル、身の丈は十メートルにも及ぶ、
クジラのような巨体だった』というような、いかがわしい情報量が多過ぎて、
どこからツッコんでいいのかが判らないような記事を売っていたそうですね。
「いくら何でも、これはひどい!」と、
東京スポーツの編集部が激おこだったという話ですから、
押しも押されもせぬガセネタという事になりますよね。
こんな記事に騙された人もいたかもしれませんが、
大抵の人は判ってて買っていったそうですね。
というのも『瓦版は話三分』という言葉があって、
七割はウソで、真実は三割程度しかないという事は承知して、
酒場での世間話のネタとして購入していく人が多かったようですね。
騙される事も楽しむ、おおらかな時代という事ですね。
では、どういう人たちがそんな瓦版を作っていたかというと
『定職につきたくない人たち』だったそうでして、
主に江戸時代のフリーターが作ってたという事になりますね。
そういう人たちが作ってますから、時にはお店からお金をもらって、
ライバル店の悪口を書いたりする事もあったそうですね。
『色が白くなるという化粧水をつけたら、逆に色が黒くなった』などという、
ネガティブキャンペーンの記事が普通に載ってたんですね。
こういう悪質な瓦版屋は、サッと売ったらサッと引っ越すそうでして、逃げ足も早かったんですね。
こんなゴシップ誌紛いの物に対してもう一つの瓦版は、
お昼頃に町に出て、二人一組で編笠をかぶり、無言で売り歩くというスタイルを取ってましてね。
こちらは売り文句も言わず、どんな内容なのかも、お客が聞かないと教えてくれないんですが、
信憑性はとても高いという、硬派な瓦版なんですね。
なぜ売り文句を言わないのかというと、
江戸時代には出版物の内容に対するお上の検閲があったので、
お上を批判するような物には認可は下りないわけですね。
ですから黙って売る事によって
『お上に知られちゃいけない、何かヤバい事が書いてあるんだろうな~』という
期待感で買わせるというマーケティングの手段だったわけですね。
こういうネタはバレたら、書く方も読む方も罰せられるので、
読んだらすぐ処分して証拠隠滅するという条件で売られていたようですので、
この時代にシュレッダーを売りに行ったら、飛ぶように売れた事は間違いないでしょうね。
微笑亭さん太