己の評価は正当に
俺だったら、これくらいの仕事、三十分で終わらせるよ。俺と代われ!」
そう言われて交代してから、もうかれこれ三時間経つのに、
まだ仕事が終わらないなんという状況を経験された方もあるんじゃないでしょうかね。
そのように、能力が低いのに
自信だけは山盛りみたいな方は、結構いらっしゃいますよね。
英語ができないのに、他人の文法や発音を指摘したりする人ですね。
「おいおい、【ポップコーン】じゃなくて【パッ!プコーン】だろ」
なんてんで、どうでもいい事を指摘してくる人ですね。
あるいはみんなでカラオケに行っても、下手なくせに自分はうまいと思い込んで、
恍惚の表情で【Official髭男dism】とか歌ってしまい、聞かされてる友達たちから
『お前は歌わずに、ヒゲダンスでも踊ってろ!』と心の中でツッコまれてる人もいますよね。
能力が低い人が自分を過大評価してしまうというこの現象は
【ダニングクルーガー効果】と呼ばれているんですね。
自分がその分野についてどのくらい知っているかを認識するためには、
自分自身がその分野について、ある程度詳しくなけれはいけないわけです。
そのため、あまり知識や経験がない状態では、自分や他人の能力を正しく判断するのは難しいですよね。
つまり能力が低い人は、自分の能力が低い事に気づいていないとも言えるわけです。
その後、知識や経験を得る事によって、能力をきちんと評価できるようになってくると
逆に自信が失われていくんですね。
受験生なら、勉強すればするほど不安になっていく状態でしょうし、
噺家なら客席が爆笑すればするほど、『自分の落語はまだまだだな・・・』と
思ってしまう状態のわけでして・・・なかなかそのレベルに達する噺家さんも少ないかもしれませんね。
この【ダニングクルーガー効果】というのは、
自信を持ちやすい一部の人に起こるわけではなく、誰にでも起こりうるんですね。
ある学校の全校生徒に対し
『自分はユーモアがある人間か?』というテストをして、自己評価をしてもらったところ、
成績が下から25%以内の人は『自分は上位40%に入っている』という過大すぎる評価をしていたんですね。
また二つの企業のエンジニアに自分を評価してもらったところ、
企業Aでは32%、企業Bでは42%の人が、『自分の能力は上位5%に入っている』
と評価したそうで、経営者が見たら半笑いになりそうな結果ですよね。
「お爺ちゃん、そろそろ免許の返納を考えてみたらどうですか?」
「免許の返納?何を言っとる!ワシはまだまだしっかりしておるぞ。
アクセルとブレーキを踏み間違えたりはせんからな!」
なんてな事を言いながら、高速道路を逆走してしまう高齢者の方を見ると、
年齢を重ねてもダニングクルーガー効果というのはあるものなんだな~と思ってしまいますよね。
微笑亭さん太