オチを探せ!
様々なパーティーグッズが売られていて、かぶり物も沢山ありますよね。
ヤンキー風のカツラとか、プリキュアもどきの被り物なんかありますが、
その中で【落武者】のカツラなんてのが結構人気があるそうですね。
「この間、会社の宴会の余興で、男性社員みんなで落武者のヅラをかぶったんだよ」
「そりゃまた、凄い絵面だね」
「課長だけは、地の頭でいけたんだけどね」
元々、落武者ヘアーって方もいますよね。
そもそも、【落武者ヘアー】というのは、なぜそうなるかという話なんですが、
戦国時代のマゲというのは、江戸時代のようにチョンマゲではなく、
茶道で使う茶筅みたく後頭部にマゲを立てる【茶筅マゲ】と呼ばれるマゲをしていたんですね。
「そのマゲは自ら進んでそうしたんですか?それとも他人から進められたんですか?」
「いえ、自薦茶筅は問いません」
ですから兜を被る時には邪魔になるものですから、
出陣前にマゲを解いて背中で束ねていたんですね。
即、シャンプーのCMに出られるような髪型になっていたわけです。
戦に負けてしまうと、身元が判るような重い兜は投げ捨て我先に逃げるので、
整えて束ねた髪が次第に解けて、ざんばら髪になり、
『落武者ヘアー、一丁上がり!』という事になるんですね。
しかし、いざ落武者になってみると、そのまま逃げ延びるのは大変だったようですね。
というのも落武者にとって最大の脅威となるのが【落武者狩り】でしてね。
特に恐ろしいのは、敵方の追手ではなく、地域の農民による落武者狩りなんですね。
その頃の日本人は、戦に敗れて逃げてくるような人間は法律の保護を失った法外人であり、
『殺して金品を奪ってもOK!』という常識の中で生きていたんですね。
「でも、農民による落武者狩りといっても、せいぜい竹槍もって、
少人数で遠くからワ~ワ~言ってるだけでしょう?」
そんな事はないんですね。
室町時代の記録では、
落武者が出たと判ると、村では鐘を鳴らして武装した村人三百人を集め、
落武者が出てきそうな道々に手分けして待ち伏せているという、
ほとんどバイオハザード状態に等しかったんですね。
その中を生き延びるのは、いわゆる【無理ゲー】ってやつですから、
ひょっとしたら当時、『落武者になっても生き延びる講座』なんてのを
各陣営でやってたかもしれませんね。
「はい、という事で、皆さんが落武者になった時、
ちゃんと生き延びれるようなノウハウを学んでもらいますね」
「よろしくお願いしま~す」
「まず、落武者になったら『一人で逃げない』という事が大事ですね」
「どうしてですか?」
「一人では四六時中、緊張を解く事ができないので、
敵に包囲されれば終わりですし、寝込みを襲われても、ジ・エンドです」
「なるほど、勉強になります」
「どうしても困った時は『お寺に逃げ込む』という手があります。
お寺は公界と呼ばれ、世俗の権力が入る事ができない聖域ですから、何人も手出しできません」
「あ、それいいですね。メモっておきま~す」
「ただし、お寺に逃げ込むというのは現世との縁を切る事になりますので、
その武士に土地や財産があっても没収ですからね」
「要するに、【戦国版・自己破産】ですね」
こんな感じで、やっていたんじゃないかと思いますね。
微笑亭さん太