味覚の不覚
おままごと遊びをする子が多いですよね。
小さな女の子が、調理器具や食材に見立てた道具を使って料理を作る真似事をしているのは、
そばで見ていて微笑ましいですね。
「・・・今日はパンを作りま~す。材料はブタ肉で~す。牛肉で~す。ジャガイモで~す。
そして鶏肉で~す・・・混ぜま~す・・・焼きま~す・・・できました~!
『クリームパン』で~す」
・・・父親はそれを聞いて、娘を『錬金術師』にしようかと思ったらしいですけどね。
独り者、独り暮らしの男性が
最も寂しさを感じる瞬間というのは、一人で食事をする時でしょうね。
自炊するのも面倒だからと、お湯を沸かしてカップラーメンを作りましてね。
フタをして三分待って、いざ食べようとしたら、ハエがポチャッと入っちゃいましてね・・・
絶望的な気分でカップラーメンを見ると『ノンフライめん』なんて書いてあったら、
涙目になりながら『奥さん欲しいな~』って思いますよ。
女性が男性をゲットするためには『相手の胃袋をつかめ』なんて事を言いますが、
料理のうまい女性というのは、それだけで男性のウケはいいですよね。
逆に言えば、どんなに美人でも、物凄く料理の下手な奥さんをもらってしまうと、
毎日手料理を食べるたびに『マーライオン』にならなくちゃいけないという、
不幸な人生を歩む事になるわけですね。
不思議なもので、料理の下手な子に限って、
料理にオリジナリティを求めるというか、アレンジしたがるんですよね。
「今日のカレー、隠し味に工夫してみたんだけど判る?」
・・・判りますって。
隠し味どころか、しっかり『チョコ』と『コーヒー』と『ヨーグルト』が主張しすぎてますから。
もう『そのもの』と言ってもいいくらい、その三つの味しかしなかったりするんですね。
「ねえ、美味しい?」
なんて聞いてくるんですが、まさに『天使の微笑、悪魔の味覚』ですよ。
うっかり『美味しい』なんて言ってしまうと、
「そりゃそうよね、愛情がタップリ入ってるもん!」
愛情はタップリ入ってるのかもしれませんが、さじ加減を知らないのが致命的なんですね。
そういう子には、しっかりと教えておくべきですよね、
『料理のレシピにある《大さじ》というのは《お玉》の事じゃないよ』と。
『メロン雑炊』だとか『パインご飯』といった摩訶不思議なメニューをこしらえておいて、
「やっぱり、栄養第一よね~」
栄養は一番、命は二番だったりしますから、困りますよね。
微笑亭さん太