人間アルコール工場
常に酔っ払いのお客さんの相手をしなければいけないから大変ですよね。
特に閉店時間を迎えたというのに、お客さんが酔っ払って寝てしまい、
いくら起こしても起きずに店が閉められないなんという経験は、
お店の経営者であれば何度かされてるんじゃないかと思いますね。
「ウチは居酒屋やってるけど、酔っ払いのお客が寝ていても大丈夫だよ」
「へえ~、どうして?」
「閉店時間になったら店内に【蛍の光】を流すんだよ。
するとね、どんな爆睡してる酔っ払いもスッと立ち上がって帰っていくんだよ」
やはり【蛍の光】というのは、聞いたら帰らなければいけない曲として、
日本人の遺伝子レベルで刷り込まれてるんでしょうね。
先日、 米ノースカロライナ州で
飲酒運転の疑いがあるとして警察に車を停められた男性がいましてね。
四十代後半のこの男性
『自分は飲んでいない』と断固否定し呼気検査を拒んだため、
病院へ連れて行かれ検査をしたんですが、その結果、
血中から〇・二%のアルコールが検出されたんですね。
これは許容量の約二・五倍にあたり、
一時間にアルコール飲料十杯を飲んだ量に匹敵するという、
飲酒運転のオリンピック代表になれそうなぐらいだったんですね。
男性は絶対にアルコール飲料は飲んでいないと言い張ったんですが、
これだけの結果が出ているわけですから、
警察にも医師にも信じてもらえなかったのも当然ですよね。
ところが、米リッチモンド大学医療センターが調べた結果、
男性の言葉は本当だったことが判ったんですね。
この男性、ビールもカクテルも飲んでいなかったにもかかわらず、
消化器官の中に酵母が存在していて、その作用で
食品の糖分からアルコールが作られていたために、検査で出てしまったんですね。
つまり早い話【体内でビールを醸造していたような状態】だったという事ですね。
この男性は数年前に抗生剤を服用していて、
その抗生剤が原因で腸内細菌に変化が起き、消化管の中で
イースト菌が生成されるようになったというのが原因だと推測されるそうですが、
これはちょっとした【錬金術師】みたいなものですよね。
お酒が大好きな方にとっては羨ましい体質ですよね。
一銭も使わずに酔っ払えるという事ですからね。
かつて『私の体にはワインの血が流れている』と仰った女優さんがいましたが、
この方の場合は本当に体にお酒が流れている事になりますよね。
体内でアルコールが作られすぎて吐いてしまったら、
【一番搾り】という事になるんでしょうかね。
きっと、この方の汗を舐めただけでも酔っぱらう事はできそうですよね。
・・・まあそうだとしても、絶対舐めないでしょうが。
腸発酵症候群は日本でも、
一九七〇年代に二十~三十の症例が報告されているそうですから、
日本人でもそういう方が存在してるかもしれませんね。
ただ常に体内でアルコールが作られていたら、車の運転ができませんから不便でしょうね。
「俺さ、腸発酵症候群で車の運転できないから、最近、居酒屋で働いてるんだよ」
「居酒屋で働いてるの?皿洗いとか?」
「いや、頭に取っ手を付けて【人間ビールサーバー】やってるんだよ」
このお酒は、あまり飲みたくないですね。
微笑亭さん太