人は叩かれて強くなる
この方が十年の歳月をかけて制定した【公事方御定書】というのがあります。
これは犯罪を犯した者への、罪と刑罰についての法典なんですが、
それまでの刑罰と違い、更正を目的とした刑罰が
盛り込まれたという事が画期的だとされているんですね。
ただ現代人からしてみると過酷な刑も多々あったようで、
カテゴリーからすると【屈辱刑】なんてのがそうですね。
その頃は『十両盗むと首が飛ぶ』と言われていたように、窃盗でも死刑があったわけでして、
今なら【振り込め詐欺団】の連中は皆殺しの目に遭うわけですね。
十両以下の盗みをはたらいた者は、
公衆の面前に半裸で引き出されムチで打たれるという【敲(たた)き】というのがありましてね。
罪の重さにより、五十敲きだったり百敲きだったり、回数が違っていたわけでして、
何度も敲きを受ける常習犯には【楽天ポイント】が与えられたという話もあるくらいでしてね。
ムチで打つというと相当酷い刑に思えますが、実際は背骨は避けて敲き、
途中で気絶もさせないよう加減をされたそうですね。
「痛い、痛い!勘弁してくださいお役人様、痛いですよ!」
「そ、そうか。すまんな」
罪人が大声で泣き叫べば、打ちすえ役の手が緩む事もあったという、
結構罪人に優しい刑罰だったようですね。
「・・・これこれ!罪人がボロボロになって、足腰立たんようになっておるではないか。
何をしておる!」
「も、申し訳ございません!」
この刑罰のコンセプトとして『当人が歩いて家に帰れる程度』というのがあったそうで、
打ちすえ役の方も、なかなか難しいさじ加減を要求されたみたいですね。
「ヒィ~!痛い・・・痛い・・・」
「すまんすまん、もう少し弱くするからな」
「いえ、お役人様・・・もっと強く・・・もっと強く敲いてください・・・」
中にはそういう、特殊な趣味の方もいたでしょうね。
ただこの刑罰は牢の門前で行われたため、
体裁や体面を気にする江戸時代の方々にとっては、
かなりの苦痛であったというのが【屈辱刑】と呼ばれる由縁ですね。
【敲き】は成人男性以外には適用されず、
成人前の少年や女性の場合は『一敲き=一日』という計算で投獄されていたそうですね。
百回敲かれるのと百日牢屋に入れられるのと、
どちらがいいのかというのは見解の別れるところだとは思いますが、
女性に対しては、公事方御定書以前には、奴(やっこ)という刑罰があったそうですね。
これは奴隷として売られるか、吉原などへ遊女として売られるという刑罰なんですね。
これ早い話、人身売買を肯定しているわけでして、
当局が公然と【女衒】をやっているようなものですよ。
いわば安部総理が、万引きした女子高生を歌舞伎町のお店で働かせるのと同じ事ですから、
現代ではありえない刑罰ですよね。
しかし日本人が体裁や体面を気にするというのは、今でも変わってないと思いますから、
こういった【屈辱刑】というのは取り入れてもいいんじゃないかと思いますね。
社会的影響が大きいけど、罪自体は軽微な場合、
往来で晒し者にするなんてのはいいんじゃないですかね。
「ねえねえ、あそこの道端で、後ろ手で縛られて筵の上に座らされて、
うなだれてる人たちがいるけど、あの人たち何したの?」
「マスクをネットで高額転売したらしいわよ」
こういうパターンで、是非取り入れてもらいたいですよね。
微笑亭さん太