庫内に光る監視の目
一九七二年の発売開始以来、四十八年の長きに渡って
プリン市場のトップを走っていると言っても過言ではないのが、
グリコの【プッチンプリン】ですよね。
カップの底に穴を開けるという斬新なアイデアがウケたわけですが、
誰もがあの突起をプッチンしてみたくなりますよね。
「俺さ、小さい頃からプリンが大好きだったんだけど、
プッチンプリンをプッチンして食べようとすると母親に
『プッチンプリンの底にある小さな棒は、プリンを作る時、
プリンにかかる圧力を調整するための物なの。
それをプッチンすると、中にかかった圧力が一気に解放されて凄い勢いで炸裂しちゃうのよ。
その爆風と容器の破片で、子供が失明したり亡くなったりという事故が、
県内だけでも毎年百件以上起こってるの・・・だからプッチンなんかしちゃダメなのよ』
と言われたから、プッチンできなかったんだよ」
「えっ、そうなの?それは本当の話?」
「俺はず~っと信じてたんだけど、それはただ単に
『プッチンすると皿を洗うのが面倒だ』という理由からくる母親の大嘘だったという事に、
大きくなってから気づいたよ」
まんまとお母さんの術中にハマったという事でしょうね。
プリン好きな方だったら誰しも、
後で食べようと楽しみにして冷蔵庫に入れていたプリンを、
家族の誰かに食べられてしまったという経験をされてるんじゃないかと思いますが、
そんな悔しい思いを二度と経験しないよう、画期的な装置が開発されましてね。
自分以外の人間が冷蔵庫の中のプリンを食べようとして取ると、
警報音が鳴り響き、元に戻すまでその警告音は鳴り止まないんですね。
これは、受け皿に付いた重さセンサーを利用してプリンの盗難を防止する、
その名も【プリン・アラート】というプリン泥棒撃退装置なんですね。
「別に警報音が鳴ったって、
それを無視して取り出して食べてしまえば、誰が食べたかなんて判らないだろう」
そう思う人もいるかもしれませんが、この装置が優れものでして、
実は【犯行の瞬間】の写真が撮影され、
プリンの持ち主のスマートフォンなどに送られてくるんですね。
これでは逃げも隠れもできませんよね。
「いつも家族の誰かに買っておいたプリンを食べられちゃってたけど、
この装置のお陰で盗まれずにすむよ」
なんてんで冷蔵庫からプリンを取り出そうとしたら、
プリンの代わりに茶碗蒸しが置かれてたりしてね。
「【プリン・アラート】の応用版として、
旦那さんに装着すると、その旦那さんを他の女性が誘惑しようとして触れると
『返して、取らないで、この泥棒猫!返して、取らないで、この泥棒猫!』という
奥さんの声が鳴り続ける装置を開発しました」
「へえ~、それは何という装置ですか?」
「【不倫アラート】です」
こんな装置も開発されるかもしれませんね。
微笑亭さん太