イッキな計らい
ビアガーデンで飲むビールが、こたえられなかったりしますよね。
お酒の席というのは、いつでも楽しくありたいですよね。
職場などでの飲み会の席における取り組みで
『3010(さんまるいちまる)運動』というのがありましてね。
これは『乾杯後三十分と終了前十分は、自席に着いて会話しながら食事を楽しみましょう』
という運動なんですね。
どなたでも経験がおありだと思いますが、宴会の席というのは、
刺し身や天ぷらには箸をつけても、締めの蕎麦やデザートは
手付かずのままなんて事が多いですよね。
宴会の後半、配膳室で出番を待つフルーツやアイスたちも
『・・・ど~せ俺たち、食べてもらえないし』みたいに、
モチベーション下がりまくってる事と思います。
今、食べ残しというのは全国で、年間五百万~九百万トンに上ってるんですね。
こういう現状を何とかしなければという事で始まった運動のようですが、
これの発案者は市役所の市長さんだというのが面白いですね。
市長さんはどうしても、お酒を注がれる事が多いですから、
『少しはゆっくり食わしてくれ』というのが本音なのかもしれませんね。
お酒が全く飲めない下戸の方にとっては、宴会の席は苦痛だという方もいらっしゃるでしょう。
そういうお酒の弱い人に無理矢理飲ませる『アルコールハラスメント』というのがあります。
大体が学生のコンパで起きる事が多いんですが、
二〇〇八年に神戸学院大学で起こった『イッキ飲ませ死亡事件』の民事訴訟で、
裁判所が初めて、アルハラの事実を公式に認めた判決を出したのをきっかけに
『アルハラはいけない』という意識が高まったという、これは画期的な判決でした。
飲める方にとっては、
飲めないお酒を無理強いされる苦しさが判らないもんですから、
そういう強要をしてしまうと思うんですね。
ですからたまには『被害者側』に立ってみるべきですよね。
そういう酒飲みは大抵甘い物が苦手ですから、
下戸の人たちが寄ってたかって『まんじゅうイッキ』とかやらせるわけですね。
口に無理矢理、羊かんやケーキを詰め込まれるという
『スィーツハラスメント』を経験してもらうわけですね。
そうすれば、パイ生地に埋もれ、生クリームまみれになりながら、
己の罪深さを実感できるんじゃないですかね。
あるいは野菜嫌いという方には『ベジタブルハラスメント』という事で、
ピーマンやニンジンを無理矢理食べさせるんですね。
十分後には、目から青汁を流して土下座するんじゃないでしょうかね。
アルハラの他に『セクハラ』や『パワハラ』は有名ですが、
太った人に対する嫌がらせなんてのも出てきましてね。
ぽっちゃり体型のOLなんかは自意識過剰になっちゃいましてね。
「・・・あ、今、私のケータイ見て『こいつ、通話してる時に
ケータイが水没しそうなくら汗かくんだろうな~』って思ったでしょう?
それ、デブハラです!・・・あ、今度はイスを見て、
『電車に乗ったら、座席二つ分取るんだろうな~』とか思ったでしょう?
それもデブハラです!・・・あ、『こいつブスだから、
樹海にでも行って死んじゃえばいいのに』とか思ったでしょう?」
「思ってないよ。それ、太ってるのと関係ないだろ。それも、デブハラ?」
「いえ、『アオキガハラ』です」
ここまで来ると、どっちが嫌がらせなんだか判りませんけどね。
微笑亭さん太