姫ごとの部屋
しばしば『城』に例えられる我が家ですから、
納得いくような部屋に住みたいと考えるのが人情ですよね。
城と言えば『お姫様』が付きものですが、
女性が『お姫様気分』を満喫できる『姫部屋』なるものが人気を集めているそうですね。
元々は北陸の不動産会社が、
中古のマンションを、天井はピンク色、照明はスウェーデン製の黄金色のシャンデリア、
床は大理石調タイルにして、西洋のお城をイメージして売り出したところ、
二十代から四十代くらいの女性に大変な人気でしてね。
これに目をつけた通販会社が、姫部屋用のインテリアや家具を販売して、
こちらの売り上げも好調なようですね。
何故、姫部屋にニーズがあるのかというと、
不況下で、外出せずに家の中で楽しめるという『経済的理由』と、
会社で男性たちと戦っている女性が、姫部屋という自分の世界に入り安心するという
『心理的理由』が挙げられるようですね。
昔から女性というのは、潜在的に『お姫様願望』というのがあるんですね。
だから彼氏に『お姫様抱っこして!』なんてな事を簡単に言うわけですよ。
・・・それが彼氏の腰骨を、粉砕するような事態に発展しようとも。
この姫部屋は、これからも進化を続けていくんじゃないかと思いますから、
部屋の周りにお濠が作られたり、部屋の中でトラと罪人が命をかけて戦ったり、
装甲騎馬が走り回ったりと、どんどん『コロッセウム化』していくかもしれませんね。
実際、姫部屋の発展型として、真っ黒な天井や、シルバーのシャンデリアなど、
黒と白を基調とした『小悪魔部屋』というのも最近出てきたそうでして、
不動産屋への問い合わせも多いようですね。
「小悪魔部屋なんてのがあるんですか?」
「ええ、ありますよ」
「どんな部屋なんですか?」
「部屋に彼氏を連れていくと、突然、男好きのするタイプの女の子が出てきて、
上目遣いで彼氏を誘惑するんです」
「マジで小悪魔がいるんですか!?」
「その後、『蝋人形の館』を歌いながら出てきた白塗りの男が、
延々彼氏に、相撲の話をしてくるんです」
「それ、小悪魔じゃなくて、普通の悪魔じゃないですか。
・・・他にも『墓地部屋』なんてのがあるんですか?」
「ええ、墓地部屋は、クローゼットが棺桶、ベッドが墓石になってまして、
シャワーがないので、お湯を柄杓で汲んで、頭からかけていただくという」
「墓石じゃないんですから!・・・『落語部屋』なんてのもありますね」
「はい、玄関を入るとすぐ座布団が置いてあって、
部屋の中ではお客さんが待ってるんですよ。
で、座布団に座って一席演るんですが、ウケるまで寝られないんです」
「嫌な部屋ですね~!ちっともくつろげないじゃないですか。
・・・この『忍者部屋』というのは?」
「ああ、これは私どもとしてはオススメしたくないんですけどね。
家賃を取りにいくと、壁がどんでん返しになってるんで、壁の中に隠れられちゃうんですよ」
「・・・何でそんな仕掛け作ったんですか?」
「で、家賃をためるだけためて、ドロンされちゃうんです」
こんな部屋ばかりだったら、あまり借り手が現れそうにないですけどね。
微笑亭さん太