名物にうまい人あり
飲食店には頑固者の【名物親父】がいたり、
その地域では誰もが知るような、ちょとした有名人がいるなんて事はよくあります。
ある男性の親戚にあたる人に、お寺の住職がいましてね。
少し悩んだりすると、そこのお寺に相談に行ったりするんですね。
「和尚さん、最近俺、仕事でもプライベートでもあまりいい事がなくて、
ちょっと鬱状態が続いてるんですよね・・・どうしたらいいですかね・・・」
「そうか・・・とりあえず、そこに一緒に座ろうか」
縁側に正座をして、二人一緒にボ~ッと御神木を眺めてたそうですね。
暫くして
「そろそろかな。ちょっと立ってみなさい」
言われた彼が立ち上がろうとすると、
すっかり足が痺れてしまって立てないんですね。
コケて悶絶する彼に、
「ほ~ら、鬱々してる余裕なんかないだろう?」
そう言って住職は、彼の足を満面の笑みで揉みだしたそうですが・・・
確かに悩んでるのが馬鹿馬鹿しくなっちゃいますよね。
この方、紛れもなく【名物和尚】なんですが、新車の交通安全祈祷に来た方に対して、
「そのお金で、良いカーステつけた方がいいよ」
と言い放ったり、厄払いの相談に来た方には、
「よしなさい、よしなさい。厄払いで高いお金を払う事自体が厄なんだから。
厄の事なんて忘れた方がいい。
厄払いなんかしなくても、一年後には
『そういえば、厄年だったな~』なんて思ってるはずだから」
とても仏に仕える者とは思えないような事を言うんですね。
こういう方ですから、周りの人は
『本当に修行を積んだ僧侶なのか?』と疑う人もいましてね。
「和尚さんは、ちゃんと修行をされてるんですか?」
「当たり前だよ。ウチの庭に滝があるだろ?
あそこで毎朝、滝行をしている」
「へえ~、そうなんですか。でも寒い日はサボったりしちゃいませんか?」
「とんでもない。修行なんだから、寒い日だって欠かさずやってるぞ」
「さすが、大したものですね」
「何しろ庭の滝は、お湯が出るからな」
「え~っ、お湯にあたってるんですか?水じゃないと意味ないんじゃないですか?」
「バカな事を言うんじゃない。
水にあたって風邪を引いたら、次の日の修行が出来なくなるだろうが!」
と怒られたって話がありましてね・・・こんな理不尽な怒られ方はないですよね。
「お寺は当然、葬儀屋さんとはお付き合いがありますよね?
葬儀屋さんって一言で言うと、どういう商売なんですかね?
「葬儀屋ってのはね、高い精進料理を出して、儲けた金で肉を食うのが葬儀屋だよ」
これは言い得て妙なのかもしれませんね。
微笑亭さん太