羽生君じゃなくても、譲る
なかなか言い出せなかったりしますよね。
混雑している電車にお婆ちゃんが乗ってきたんですが、
誰も席を譲ろうとしないんですね。
そうしたら、見るからにヤンキーという若者がおもむろに立ち上がって、そのお婆ちゃんに、
「おい、婆さん、ちょっと席離れるから、ここ場所取ってろ!」
そう言って、別の車両に消えていったって話がありましてね・・・
令和の時代にも、素直に『席どうぞ』と言えないシャイな若者はいるんですね。
「この前私、満員電車に乗ったのよ。
ちょっとしんどいな~って思ってたら、目の前で座ってる小学校低学年くらいの男の子が
『どうぞ』って、席を譲ってくれようとしたのよ」
「あら、優しい子ね」
「うん。でも申し訳ないから断ったら『お腹の赤ちゃんも座りたいって言ってるよ』って。
『僕も今度、お兄ちゃんになるの』って言うから譲ってもらったのよ」
「まあ~素敵な話ね」
「そうでしょう?でも私、妊婦じゃないのよね」
日本人が電車で席を譲らない理由としては
『知らない人と話す事に照れがあるからではないか』という話がありますね。
基本的に人見知りな人が多いんでしょうかね。
それから赤ちゃんを抱いたお母さんには席を譲りやすいんですが、
高齢者には席を譲りにくいという心理もあるようですね。
というのも『声をかけたらどう思うかな?』って思ってしまい、
ひょっとしたら気まずい雰囲気になってしまう可能性を考えてしまうからなんですね。
譲られたお年寄りに、
「ワシはまだそんな年ではない!失礼な!」
などと怒られてしまったなんという例も実際にありますからね。
怒られないにしても、
「あ、どうぞ、座ってください」
「・・・あ、いえ大丈夫です」
「そう仰らずに、どうぞ」
「いえいえ、本当に大丈夫ですから」
そう言われた若者が、すごすごと元の席に座るなんて光景も見られますからね・・・
これは譲ろうとした方が、
妙な敗北感を感じなきゃいけなくなっちゃいますから気の毒ですよね。
そのうち、平和的に席の譲渡が行われる制度が考え出されるかもしれませんね。
「おい、原田じゃないか」
「何だ、北村か。お前も、この電車に乗ってたんだな」
「随分と混んでるよね。
だけどさ、この電車、座席に番号が書かれてあるけど、何でナンバリングされてるんだ?」
「あ、これはね、席を譲る譲らないで妙な揉め事が起きないように、
席を譲る順番が書かれてるんだよ」
「なるほど。お年寄りとか乗ってきたら、
まず【一番】の席の人が立たないといけないんだね。
この車両混んでるから、隣の車両に移動しようか」
「止めた方がいいよ。隣の車両は、お客さん一人一人に、押しボタンが渡されるんだよ」
「押しボタン?何の?」
「お年寄りが乗ってきた時、
誰が席を譲るべきかを乗客全員の投票で決めるためだよ」
「えっ、押しボタンで譲る人間を決めるの?
投票で一位になった人が譲らなきゃいけないの?ウソだろ?」
「本当だよ。だから俺今、隣で一位になったから、
いたたまれなくなってこっちの車両に移ってきたんだから」
こんなシステムが導入される日も近いんじゃないでしょうかね。
微笑亭さん太