湖の白鳥
その美しい姿は、見る者を魅了しますよね。
特に水面を優雅に泳ぐ姿が魅力的ですが、
『優雅に泳ぐ白鳥も、水面下では激しく足を動かしている』というフレーズを
聞いた事がある方が結構いらっしゃるんじゃないかと思います。
実はこれ、昭和に大ヒットした漫画【巨人の星】の作中で、
星飛雄馬のライバルである花形満が言った言葉が元なんですね。
「青い水面に美しく優雅に浮かぶ白鳥は、しかしその水中に隠れた足で、
絶え間なく水をかいて蹴っている。
だからこそ、常に美しく優雅に浮かんでいられる僕は、
その白鳥であるためにも、星君・・・君を打つ!」
こう宣言する台詞から広まったフレーズなんですね。
ですから古の偉人の名言ではなく、
原作者の梶原一騎さんの作った言葉のわけです。
しかも白鳥というのは、
水面下でそれほど激しく足を動かしているわけじゃないんですね。
実際に白鳥が水面に浮かぶ原理は、白鳥にはお尻に油脂腺というものがあり、
そこから分泌される油を羽繕いで羽に塗りつけ、
撥水性を持たせ、またそれによって羽毛の間に空気を溜められるようになり、
それが浮き袋の役目を果たして浮かんでいるんですね。
ですから割と楽して泳いでるわけでして、
人間たちが勝手に勘違いして美談にしている感じでしょうね。
そんな白鳥を巡って事件が起きる事もあるようでして、
先日、千葉県我孫子市で、白鳥へのエサやりを市の職員から注意された事に腹を立て、
その職員に向け、ノコギリを振り回したとして、公務執行妨害の疑いで
72歳の無職の男性が逮捕されたんですね。
この男性、五年ほど前から白鳥にエサをやり続け、
たびたび職員らに注意されていたんですが、
今回は逆ギレして怒鳴りながら職員を近くの事務所まで、
ノコギリを振り回しながら追っかけたそうでして、
ちょっとした【電動式ではないジェイソン】みたいな感じですよね。
ノコギリはエサとなる草を刈る際に
使用していたため持っていたんですが、この容疑者の名前が
【白取(しらとり)】というそうでして、
白鳥との因縁を感じさせる名前と言えなくもないですよね。
この方はきっと、
白鳥の事がお好きだったからエサをやり続けてきたんでしょうが、
鳥獣保護法で野生鳥獣の捕獲や飼養というのは禁止されているんですね。
エサをやる行為は飼養に当たるので職員も注意してきたんでしょうね。
逮捕された容疑者は取調室に連れていかれ、取り調べにあたる警察官に、
「そこのイスにスワンなさい・・・さあ、自分のやった事をハクチョウしろ!」
てな事を言われたんでしょうね。
しかし『情けは人の為ならず』と言いますから、
エサをもらっていた白鳥が人間の姿になって、
容疑者のところに恩返しに来るかもしれませんよね。
「・・・私は、あの時に面倒をみていただいていた白鳥です」
ふと見ると、股間から白鳥の頭を生やしてバレリーナの格好をした
志村けんみたいなオジサンが立ってたら、ちょっと嫌でしょうね。
微笑亭さん太