お前に言われたくないよ
【あなた】とか【君】、【お宅】など、
色んな言い方がありますよね。
そんな、受け手を指す【二人称代名詞】のひとつに【お前】という言葉があります。
今では友達や家族、恋人といった親しい人に対してしか使いませんが、
近世前期までは、目上の人に用いた敬称であり、決して失礼な言葉ではないわけです。
先日、プロ野球の中日ドラゴンズの応援団が【重要なお知らせ】として、
『ずっと使っていた応援歌【サウスポー】の使用は、
当面の間自粛します』という内容の発表が、ツイッターで発せられましてね。
その理由というのが、応援歌【サウスポー】の歌詞にある
『お前が打たなきゃ誰が打つ』の【お前】という表現に対し、
『【お前】ではなく選手の名前で呼んでほしい』との意見を
ドラゴンズの与田剛監督が球団側に伝えたからという事なんですね。
その旨は球団から応援団へ要望として伝えられ、
歌詞の急な変更は難しいと判断した応援団が、
当面の演奏自粛を決めたという事で、プロ野球ファンのみならず、
様々なところで物議を醸したんですね。
さらに、与田監督が
『【お前】という言葉を子供たちが歌うのは、教育上良くないのではないか?』と
指摘した事も伝わってきて、騒ぎは一層熱を帯びたんですね。
これは応援団の方々にしてみたら寝耳に水で、
頭の中には【?マーク】が二十個くらい浮かんできたのではないかと思います。
応援歌だと思って歌っていたのが、
知らない間に【四面楚歌】になっていたわけですからね。
応援団の中には、納得いかない方も結構いらっしゃるでしょうね。
「【お前】って歌詞を変更しろ?何わけ判んない事言ってんだ。
そんな要望は、とても聞けないね。今まで通りに歌おうぜ!」
なんてんでそのまま歌ってたら、怒った与田監督が応援団に向かって、
「いい加減にしろ、お前ら!」
と言ったって話がありましてね・・・
そもそもが【応援歌】ですので、
ある程度強い言葉で闘志を鼓舞するという側面もありますよね。
選手にしてみたら『お前が打たなきゃ誰が打つ』と言われるので
『よし、絶対打ってやる!』と思うわけでして、
『申し訳ありませんが、あなた、打ってもらえますか?』と言われたら
『いえ、遠慮しておきます・・・』みたいな感じになっちゃいますよね。
この件に関して色んな方にインタビューしてみると、
中日の選手は『気にしてない』と仰ってましてね。
そして中日のファンの方々も『気にしてない』、他球団の選手も『気にしてない』、
この件を扱ったメディアのコメンテーターの皆さんも『気にしてない』・・・
じゃあ誰が気にしてるんだろうという話になっちゃいますよね。
ますます【誰も得してない悲しい事件】という様相を呈してますよね。
【お前】という歌詞を変更する理由が『教育上よくない』という事なら、
これから【乱闘】なんて絶対に子供たちに見せてはダメですよね。
【盗塁】は盗みを助長しますし、【隠し球】も卑怯な子供が育ちそうだから禁止。
【刺す】、【殺す】はもちろん、【三重殺】なんてのは、
子供が連続殺人事件を起こしそうなので、将来的には使用禁止になるでしょうね。
微笑亭さん太