芦田マナーだよ
失礼のない態度をとり、マナーを守るのは当然ですよね。
しかし世の中でまことしやかに語られる【マナー】の中には、
『本当にそんなマナーが存在するのだろうか?』と耳を疑いたくなるようなマナーも、
数多く存在してるようですね。
例えば『乾杯でグラスを合わせる際は、
上司のグラスよりも下から合わせなければならない』というマナーがあるそうですね。
これは自分が上司よりも上であってはならないという
意識から派生したマナーだと思われますが、そんな些末な一瞬の出来事を
チェックしている上司がいたら、ちょっと嫌ですよね。
また『出先で出されたお茶菓子やお茶には
手を付けてはいけない』というマナーもあるようですね。
『取引先での飲食は卑しい』という意識からだと思われますが、
せっかく先方が用意したお茶やお菓子を捨てる事になり、その方が失礼な気もしますけどね。
マナーというのはマナー講師と呼ばれる人たちが作り上げた
空想、妄想だという批判もありますが、時代と共にマナーが
変化していくなんて事はあるでしょうね。
「野村君、君、今、部長に直立不動で深々と頭を下げて、
明瞭な声で『おはようございます』と挨拶をしただろ?それは君、マナー違反だよ」
「えっ、そうなんですか?」
「確かに昭和、平成はそんな挨拶の仕方がいいとされていたけど、
令和の今、挨拶の仕方も変わるんだよ」
「どうすればいいんですか?」
「君はそんな事も知らないのか?
目上の人に挨拶するときは【チョリーッス】って言うのがマナーだよ」
「チョリーッスですか。その際、指や目はどうしたらいいんですか?」
「本当に何も知らないんだな。
【チョリーッス】の時は、左手は腰に添えて、足は少し開いて、
くれぐれも膝は曲げない事。
腰から三十二度身体を倒して右目を閉じて、右手をチョキにして
水平に右目を挟むように添えて【チョリーッス】だよ。
このくらい社会人として最低限度のマナーだろ。ちゃんと覚えておきなさい」
「かしこまり~」
なんてんで、令和の時代には、より一層怪しげなマナーが流行るかもしれませんね。
「あなた、マナー講師をされてるそうですね?
では、さぞや普段から、他人のマナー違反が気になって仕方ないでしょうね?
マナー違反を見つけたら、指摘しまくるんじゃないですか?」
「いえ、マナー違反を見たとしても、一切指摘しません」
「どうしてですか?」
「【他人のマナー違反を指摘してはいけない】というマナーがありますので、
指摘すると、マナー違反になってしまうんです」
これはもう、何が何だか判りませんよね。
微笑亭さん太