衆人環視の中、囚人看守の仲
出来れば経験したくない事のひとつに、
『臭い飯を食う』という事が挙げられるんじゃないでしょうかね。
刑務所に入るのは誰でも嫌ですが、悪い事をして刑務所に入ったら、
労役という事で作業をしなければなりません。
その作業中は一切喋ってはいけないし、よそ見をしてもいけない規則があるんですね。
ですから、たとえ窓の外が大雨でカミナリが鳴っていたとしても、
窓から外を見る事はご法度なんですね。
うっかり『凄い雨だね~』などと素直な感想を呟いただけで、
大ごとになってしまい、懲罰という処分が待っているわけですね。
社会の決まりを破って刑務所に入った人が、
今度は刑務所の決まりを破って罰を受ける事になるのは
こたえるんじゃないかと思いますね。
とは言うものの囚人も人間ですから、お喋りもするし、よそ見もしますよね。
刑務所では、よそ見の事を【脇見】と呼ぶそうですが、
ある刑務所で、一人の囚人が作業中に脇見をしているところを、
担当の看守に見つかってしまったんですね。
「お前、どこを見ている!?ちゃんと手元を見て仕事をしろ!
お前、今、脇見をしていただろ?」
「いえ、私は脇見などしていません」
「ウソをつけ!横を見ていたじゃないか!」
「いえ、私は横を見ていたのではなく、手元を見て仕事をしてました。
手元を見るために横を見てました」
「何をわけの判らない事を言ってるんだ!?」
「実は私は、若い頃からキックボクシングをやっていて、
頭を何度も蹴られた影響で、斜視になっているんです。
だから、手元を見るためには、横を見なければいけないんです」
実にアクロバティックな言い訳でしてね。
言った方も言った方なんですが、
「それなら仕方がない」
納得した方も納得した方でしてね。
その囚人、何とか懲罰を回避する事に成功したんですが、
ただその日以来、食事をする時には、
横を見ながら食べないといけなくなったそうですね。
先日、スウェーデンの刑務所で六人の囚人が収監されている部屋の施錠を、
看守がかけ忘れてしまうという重大な落ち度があったそうですね。
六人のうち三人が殺人犯という、やんちゃなルームメイトばかりだったそうでして、
脱獄してくれと言わんばかりの状況になったわけです。
ところが彼らは脱獄するどころか、その機会を利用して、
ブラウニーケーキを焼いて、テレビを見ていたそうでしてね・・・
後に彼らは『長い受刑期間の中で最高の時間だった』と述べたそうですね。
凶悪犯に対してこう言うのも何ですが、何とも可愛らしい話ですよね。
これはもう、更生したと考えてもいいんじゃないですかね?
微笑亭さん太