いい話風
人に優しくしたり、また人の優しさに触れた時、
誰もが心温まる思いをしますよね。
「この間、出張のために空港に行ったら、
高校生くらいの子がひどく落ち込んで座ってたんだよ。
『体調でも悪いのかい?』と声をかけると、『そうじゃない』と」
「ほう。どうしたの?」
「その彼が言うには
『伯父の告別式に参列するため空港に来たんだけど、
飛行機代を落としてしまった』と言うんだよ」
「・・・はあ・・・」
「『なくしたお金はいくらなのか?』と聞くと『六万円』だと」
「・・・え~っと、どっかで聞いたような話だね・・・」
「だから『これを使いなさい』と言って、
俺がその六万円を貸してあげたんだよ」
「やっぱり、最近あった美談に似てるね。
ひょっとしてその後、新聞がきっかけで再会したとか?」
「そう、その通り。
たまたま新聞を見たら、その子の顔写真が載ってたんだよ・・・
詐欺団の一員として」
いい話かと思ったら、
単なる寸借詐欺だったという・・・
そんなのは悲しいですよね。
恋人や夫からの暴力に苦しむ女性というのは後を絶たないわけですが、
毎日のように恋人から暴力を振るわれアザが絶えない女性がいましてね。
彼女の事を思う男友達が心配をして、
「病院行くまで殴られても、まだ一緒にいたいのかい?」
「・・・それは・・・あの人が私を愛してくれてるから・・・」
「そんなのは愛じゃないよ。ねえ、僕と結婚しないか?」
「え?あなたと?どうして?」
「僕が暴力抜きで君を幸せにしてあげるよ。
暴力がなくても幸せになれるんだって事を、僕が一生かけて証明したいんだ」
「・・・本気で言ってるの?」
「もちろん、本気さ」
「そう・・・ありがとう・・・
じゃあ、私が自分の力であの男と別れられたら、
今の言葉、もう一度言ってね」
その後、彼女は恋人と決別しましてね。
「・・・なるほど、お前と奥さんの馴れ初めは、そういう事だったのか。
暴力から救った言葉がプロポーズの言葉なんて、素敵な話だね」
「だろ?あの時、暴力が怖いと毎日震えて泣いていた弱虫な女の子が、
今や立派な【鬼嫁】だよ・・・あんな事言うんじゃなかったな・・・」
何が正解なのかは判りませんよね。
微笑亭さん太