大切なのはキモチ
そこの仲居さんなどに『これ、少ないですけど』と言って
お金を渡す【心付け】というものがありますよね。
いつ、どんな風に渡せばいいのか
判らないという方も多いんじゃないかと思いますが、
渡すタイミングとしては、初めに仲居さんに部屋に案内された時、
去り際にさりげなくポチ袋などに入れた物を渡すのがスタンダードな形ですね。
金額としては千~三千円くらいが相場のようですが、
若い方ですと、心付けという風習自体を知らないなんて方もいるでしょうね。
「・・・今のお客さん、若いのに心付けをくださったわ。いくらくれたのかしら?」
ワクワクしながら袋を開けてみたら、
中からマクドナルドのクーポン券が出てきたりしましてね・・・
その日、そのお客さんの夕食には、
チーズバーガーとポテトが出てきたらしいですけどね。
米国を始めとして、海外では【チップ】の慣習がある国が多いですよね。
そういう国では、サービス業の最低賃金が安く設定されているために、
チップがサービス業従事者の生活の糧となってましてね。
日本ではチップの慣習は基本的にはありませんが、
【サービス料】などの名目で無意識のうちに徴収されているため、
本当は心付けも渡さなくていいという事になりますよね。
チップを渡す慣習のない日本のホテルや旅館において、最近、
【キモチップ】なる物が話題になっているそうですね。
これは四年ほど前に登場したものなんですが、
チェックアウト前に部屋にそっと置いておく、
感謝の気持ちを表したメッセージカードみたいな物ですね。
元々はレストランなどで食事をした際に
【美味しゅうございました】とか【ごちそうさまでした】などと
書いて置いておくメモ用紙だったようですが、それがホテルの部屋を出る際、
【お世話になりました】とか【また来させていただきます】と書いて
残しておく物に変わっていったようですね。
「なるほど、【キモチップ】か。よし、俺も部屋に残しておくかな」
なんてんで、従業員の方への感謝のメッセージを残し、部屋を出たんですね。
ところが荷物を持って建物を出た途端に、従業員が慌てて追っかけてきて、
「お客さ~ん!忘れ物で~す!
この【お世話になりました、ありがとう】って書いてある紙、忘れてますよ~!」
浸透するのには、まだまだ時間がかかりそうですね。
「この間、お客さんがチェックアウトした後、
部屋の掃除をしようと思って部屋に入ったら、置いてあったのよ」
「あ、ひょっとして【キモチップ】ってやつ?」
「違う違う。エレキバンが置いてあったのよ」
「エレキバン?肩こりを治すやつ?何で?」
「【チップ・エレキバン】って事じゃないの?」
ホテルの従業員たちの間では、そんな会話が交わされてるかもしれませんね。
微笑亭さん太