涙のリクエスト
よく笑う人の方が、他人からは好かれますよね。
お笑い芸人にとっても、
そういうよく笑う人ばかりが客席にいてくれたら、
どんなにありがたいか判りません。
テレビのお笑い番組を見ていると、
必ずといっていいほど入るのが、【録音された笑い声】ですよね。
ただ不思議なのが『あの声が耳障りだ』という声はよく聞きますが、
『あの笑い声がいいよね!』と言っているのを聞いた事がありません。
恐らく世の中の大多数の人が、あの笑い声を
好ましく思っていないんじゃないかと思いますが、
今日もお笑い系の番組では、相変わらず
あの録音された笑い声が流されているわけですね。
しかもこれ、日本だけではなく、
海外のお笑い番組でも同じ事がされているわけですから、
万国共通という事が言えますよね。
じゃあなぜ、
大多数が『好きではない』と思っている【録音された笑い声】を、
テレビ局が使い続けているのかという疑問がわくわけですが、
実はある調査によると、あの笑い声を入れる事によって、
視聴者の笑う回数と時間が増え、
ネタをもっと面白く感じる効果があるんだそうですね。
「どこで笑えばいいか判らない人って結構いるらしいからな。
そういう人は普段の会話でも、全然面白くもない、
トンチンカンなところで笑ってたりしてるからね」
「・・・ハッハッハッ、お前の話、マジウケる~」
こういう人のために笑い声を入れる必要があるのかもしれませんね。
公開放送の番組の客席には、積極的に笑って他の人の笑いを誘発する
【笑い屋】と呼ばれる人たちがいたりしますね。
大抵が女性のようですが、
彼女たちはれっきとした【プロ】のわけでして、
ある意味、日本のお笑い番組を牽引している存在と言えなくもないわけですね。
【笑い屋】があるなら、その逆の【泣き屋】がありそうなものですが、
中国や韓国、台湾などでは、お葬式の時に雇われて泣くのを仕事とする
【泣き屋】とか【泣き女】と呼ばれる商売が実際にあるわけですね。
日本では、【泣き屋】の存在は確認されてないようですが、
落語の人情噺を聞いて客席で感動してくれる
【感動屋】という商売が成立するかもしれませんね。
「ウッ、ウッ、ウッ・・・この噺家さん、ボロボロの扇子使ってるわ。
新しい扇子を買うお金がないのね・・・ウッ、ウッ、ウッ・・・
手拭いには【中島酒店】って名前が入ってて、
酒屋さんからタダでもらった物だし、
着物も古着屋で買った物みたいだから
袖が短くて半纏みたいになってるし・・・ウッ、ウッ、ウッ・・・
この人の高座は本当に感動するわね~」」
「・・・すみません、噺の内容で泣いてもらえますか?」
何でも涙を流せばいいってものじゃありませんよね。
微笑亭さん太