名残惜しい機能
彼は生存競争を乗り越えて自然環境により適応した者が
子孫を残す事で種が進化していくという【自然淘汰説】を提唱して、
『ヒトはサルと同一の祖先を持ち、その祖先もまた、別の生物から進化したものである』
という現代の進化論の礎を築いたわけですね。
そのヒトが進化する過程の中で、
必要がなくなった器官というものがありましてね。
そういう器官は退化していくんですが、
その名残は今でも人体に残されているんですね。
例えば、耳の周囲にある
【耳介筋】という耳を動かすための筋肉がその例でしてね。
本来動物は、音の方向へ耳をよく動かします。
聴力は、夜行性の動物にとって非常に重要な能力です。
しかし、現代人にとってもはや耳を動かす能力はほとんど役に立たないため、
耳を動かす筋肉は退化してしまっているんですね。
また、【鳥肌】も進化の過程で失われた機能の名残ですね。
鳥肌は、表皮と真皮上層の間にある立毛筋と呼ばれる筋肉が収縮する事で、
毛根が引っ張られて毛が逆立つという現象なんですね。
素晴らしい歌を聴いて心を揺さぶられた時に鳥肌が立つのは、
感動によって交感神経が興奮し、
アドレナリンが分泌されて立毛筋が収縮するためですね。
「女の子たちが、俺を見ると鳥肌が立つってよく言ってるけど、
それは俺に会えて感動してるからなんだね~」
それを聞いた女の子たちが、一斉に鳥肌がたったそうですね・・・
理由は明らかに【感動】ではないでしょうけどね。
進化した人類が捨ててしまった器官で最も有名なのが【尻尾】ですね。
人間には尻尾はありませんが、はるか昔の祖先が尻尾を持っていた事は、
尾てい骨と呼ばれる小さな骨が示していますし、
妊娠四週目の胎児を見れば、人間にも尻尾がある事が確認できるんですね。
「人間の尻尾って、何で無くなっちゃったんだろうね?」
「それはさ、無くなったんじゃなくて、ちぎれちゃったんだよ」
「そうなの?何でちぎれちゃったの?」
「サルの中で、強い奴や権力を持った奴に、
ちぎれるほど尻尾を振った奴だけが人間になれたんだよ」
「なるほど。そういう器の小さい奴は人間になれたんだね」
「でもそういう連中は、小悪党が多いから、
何か悪い事をすると、また尻尾が生えてくるらしいよ」
「あ~それで、警察に尻尾を捕まれるんだね」
人間に残っている最も可愛らしい進化の名残は、
赤ちゃんが手の平に置かれた物をギュッと握りしめてしまう
【把握反射】という反応だそうですね。
生まれてから生後五~六ヶ月までこの反射は見られるそうですが、
その後自然と失われてしまうそうですね。
把握反射は、生後間もなくでも木にしがみつけるようにという、
サル特有の反射と握力の名残だと考えられてるんですね。
「誰でも赤ん坊の頃はそうだったかもしれないけど、
大人になったら握りしめたりしないよね、ハハハ・・・」
そう言ってる人の手のひらに一万札を置いたら、
0・一秒で握りしめたりしましてね・・・
食虫植物が葉を閉じてハエを捕まえるスピードより早かったそうですけどね。
「私たちは大人になってからでも、そういう反応はあるわよ。
手のひらに乗せられたモノをギュッと握るだけで、お金になるんだから」
風俗関係に勤める女性が、そう言っていたそうですけどね。
微笑亭さん太