テレビ受難の時代
その商品を売るための大事なツールですから、好感度も高く、
インパクトのあるCMを作るのが理想ですよね。
CM好感度ランキングで二位を獲得し、
ユーチューブの動画再生回数が八十七万回を超えるという人気CMが
【ハズキルーペ】のCMでしてね。
渡辺謙さん、菊川怜さん出演のバージョンからブレイクした感がありますが、
このCM、松村さんというハズキルーペの会長ご自身が
制作総指揮を務められているそうですね。
CM制作というのは、その道の専門家である
CMクリエイターに任せるのが普通ですが、松村会長が仰るには、
「CMクリエイターは商品を売る事よりも、自分の作品を作ろうとして、
見当違いな企画を持ってくる事が多い。
『ミラノの駅から始まって』とか『お殿様にハズキルーペを献上して』とか。
こちらは六十秒のCMの宣伝費に百億円かけていますから、一秒二億です。
ミラノの風景なんか無駄に見せるくらいなら自分でやりますよ」
との思いで自ら制作されたそうなんですが、
そのボツになったという【お殿様にハズキルーペ献上バージョン】は、
正直ちょっと見てみたい気がしますね。
きっとお殿様に扮した渡辺謙さんが
『まことに幟の字は、小さすぎて読めぬわ!』とご立腹になるんでしょうね。
そして奥方役の菊川怜さんがハズキルーペをお尻で踏んだ後、
『ハズキルーペ、私(わらわ)の好みじゃ』なんて事を言うんでしょうね。
武井咲さんや小泉孝太郎さんが出演されている
【黒革の手帳バージョン】も好評なようで、業績も伸びている事でしょうね。
「ハズキルーペは文字を大きく見せるんですね」
「はい、特に【売り上げ】という文字を見ると、物凄く大きくなりますね」
どうやらハズキルーペは文字だけじゃなくて、利益も大きくしてるようですね。
高額なテレビCMを流す立場のスポンサーからしてみれば、
視聴率の高い人気番組の提供をしたいと思うのが当然ですよね。
ところがネット時代に突入するにつれ、
リアルタイム視聴率は低下の一途を辿り、
十%を超えれば大ヒットで、一桁も当たり前などという状態になっています。
まさに冬の時代を迎えたテレビ界ですが、
現状打開のために新指標として、録画再生の視聴割合を指す
【タイムシフト視聴率】を導入しましてね。
従来の視聴率だけでなく、
一週間のタイムシフト視聴率を合算した数字を元に、
スポンサーと広告代理店、テレビ局が取引する事になったんですね。
これによって各局では、
新指標を元にした変革が起こっているそうですね。
各局それぞれ新たなドラマ枠を新設し、
【ドラマ重視】の姿勢を鮮明にしてきてるんですね。
ドラマというのはバラエティなどに比べて製作費がかかるんですが、
たとえコストパフォーマンスが悪くても、ドラマや映画、アニメといった
【録画でじっくり見たい番組】を増やそうとしているわけですね。
よくクイズ番組などで、番組を見続けてもらうために
『答えはCMの後で!』なんてやるのが、今や常套手段になってますが、
最近それは逆効果になっているそうですね。
というのも視聴率を分析すると、
あからさまなCM誘導は視聴者を逆にイライラさせてしまうため、
こうした番組は逆にCM中にチャンネルを変えられやすい傾向があるんですね。
そう考えてみるとこれからのクイズ番組では、問題を出した後に、
「答えはCMの中で!」
なんという正解発表の仕方も出てくるんじゃないですかね。
微笑亭さん太