そこはお察しいただきたい
『息子さん、ピアノ上手になりましたね~』
なんてご近所さんから言われたら嬉しいでしょうが、
これが【京都】に住んでる方ですと、
事情が変わってくるようですね。
「坊ちゃん、ピアノ上手にならはったなあ」
「やっぱり聞こえてましたか?
ご迷惑をおかけしまして申し訳ありません」
どうやらこう答えるのが【正解】なんだそうですね。
他にも夏場なんかに、
自宅の庭にある大きな木が生い茂ってきた時、
お隣さんに、
「よう育ってますね~。夏を感じるわ~」
「虫や落ち葉で、ご迷惑おけかけしてすみません。
そろそろ手入れしますので」
これがやはり、京都的な【正解】なんだそうですね。
これらは
【京都のお察しシステム】なんて呼ばれたりもする、
京都独特の【婉曲表現】なんだそうですね。
褒め言葉というオブラートに包まれた
【本音】を察知できないと、
京都ではなかなか暮らしにくいと言われています。
この婉曲表現で一番有名なのは、
「ぶぶ漬け、いかがどすか?」
という台詞ですね。
【ぶぶ漬け】とは【お茶漬け】の事ですが、
これはいつまでも長居しているお客を帰らせたい時、
遠回しにを帰宅を促す技ですね。
どんなに待っていても、
本当にぶぶ漬けが出てくる事はありませんので、
一応、【永谷園】持参で行った方が
いいかもしれませんね。
こういう婉曲表現があるという事が、
誇張されて世間に広まってしまい、
京都の方々が迷惑をしているという話もありますが、
婉曲表現が判り過ぎるというのも問題かもしれませんね。
営業マンなんかが京都のお宅を訪問して、
「奥様、是非とも、
この保険に入っていただきたいのですが」
「はあ・・・考えときますわ」
「考えときますわ?
・・・それは、セールスマンなどに使う常套句ですね。
要するに【全然、考えるつもりがありません】
という事ですね?」
「いや、あの・・・おおきに」
「【おおきに】は、
もちろん【ありがとう】の意味もありますが、
断る時にも使われますよね?
【お気持ちだけもらっておきますね、ありがとう】
という感じでしょうか?
そう仰らずに、是非、この保険を!」
「はあ、よろしおすなぁ」
「出た!【よろしおすなぁ】とはズバリ、
【それは良かったですね、
まあ私には関係ないですけども】という意味ですよね?」
「あんた、なかなかしっかりしたはる」
「これは褒められているようですが、
褒め言葉ではないですよね?
【ちゃっかりしている】とか【ずる賢い】とか、
要はそういう意味ですよね?」
そこまで判ってしまうのは、
むしろマイナスじゃないかと思うんですけどね。
微笑亭さん太