決してムシできない自販機
同じ土俵で戦ったら、まず勝てない連中というのがいましてね。
それが【虫】たちですね。
虫の能力というのは本当に半端ないわけでして、
例えば【ノミ】のジャンプ力は約三十センチなんですが、
これを人間の大きさで換算すると、
三百メートルくらいジャンプしてる事になるんですね。
ひょいと飛び上がっただけで、
東京タワーのてっぺんまで行けちゃうというのは凄いジャンプ力ですよね。
そしてその東京タワーに、
人間の大きさになった【セミ】がとまって『ミ~ン、ミ~ン』と鳴いたとすると、
その鳴き声は九州まで届くほどの音量なんだそうですね。
また【カブトムシ】は人間サイズにしたら、
一匹でジャンボジェットを引っ張って歩けるくらいの力持ちなんですね。
その怪力を生かしたツノを使っての攻撃も凄いんですが、
体も硬いため、スズメバチの針も通さないという、
ディフェンス面も完璧なんですね。
ですから、樹液争奪戦においても負け知らずで、
他の昆虫が先に樹液を吸っていても、後から来たカブトムシが
『お前ら、どけどけ!』と蹴散らして、自分が一番いいポジションを取るという、
【昆虫界のジャイアン】だったりするわけですね。
そんな凄い虫たちですが、
触るのも見るのも苦手という方は結構いらっしゃいます。
そういう方が聞いたら意識を失いそうな話ですが、
食用に加工した昆虫だけを集めた【昆虫食自動販売機】が、
熊本市中央区にあるんですね。
自販機にはテントウムシやハチの絵がプリントされ、
上部には『昆虫食をはじめました』のプレートが掲げられてるんですね。
商品はチョコレートでバッタを包んだ【チョコバッタ】や、
ボトル入りの【コオロギプロテインバー】など八種類で、
各六百円~千円で売られてるそうですね。
一体誰が買うのかと思うんですが、意外にも売れ行きは好調だそうですね。
昆虫を売る他にも、変わり種の自動販売機というのはありそうですよね。
「ここはズラ~ッと自動販売機が並んでるけど、
ユニークな自販機があるみたいだね」
「そうなんだよ。
この自販機は顔認証システムが付いてるからね、一見さんお断りなんだよ」
「じゃあ、新規のお客さんは一生買えないじゃないかよ」
「こっちのはね、当たり付きの自販機だよ」
「えっ、当たり付き自販機は、今までにもあったろ?」
「いや、この自販機は当たると【ツナ缶】が出てくるんだよ」
「いらね~!喉乾いてる時にツナ缶はいらないだろ。
・・・こっちのは、自販機にカメラが付いてるね」
「そうなんだ。飲み物を買うと写真を撮ってくれて
『みんな、この人が【綾鷹】を買ったよ~!』なんてんで、
ツイッターで全身写真付きで投稿されるんだよ」
「迷惑だね、それは・・・うわっ!
何この自販機!?血が飛び散ってるみたいなホラーな外観だけど」
「その自販機で飲み物を買って缶の取り出し口に手を入れると、
冷たい手に握手されて、その後缶を渡されるんだよ」
「怖いよ!うなされそうだね」
「いやいや、その隣の自販機の方が凄いよ。
お釣りを取り忘れると、自販機が物凄い勢いで追いかけてくるんだよ」
どの自販機も、あまり人気は出そうにないですね。
微笑亭さん太