潔癖のブロック
昭和の頃、子供たちは泥だらけになって走り回っていましたが、
平成になってから衛生に対する意識が随分変わりましたよね。
抗菌グッズなどというのも盛んに発売されるようになった結果、
【過剰に潔癖症な人】というのも増えた気がします。
汚れを過剰に気にして、実際には全く汚れてなくても、
その汚れをさらに落とそうとしたり、
汚れていると思い込んでいる物に触れられなくなったりするわけですね。
「君、かなりの潔癖症なんだって?」
「はい。だから私、お買い物が苦労するんです。
お札なんて誰が触ったか判らない物、とても使えません」
「なるほど。じゃあ【カード】を使えば大丈夫だよね」
「とんでもない!
カードで買い物して『サインをお願いします』って渡される、
人の触った【ボールペン】が嫌なんです」
「そんなんじゃあ、食べる物を買ったりするのも苦労するでしょう?外食なの?」
「いえ、外食はしません。
私、人の手料理が食べられませんから」
「じゃあ自炊してるの?」
「はい。スーパーとかで買ってきた物は全て、
除菌シートで拭いてから冷蔵庫にしまいます」
「徹底してるね。旅行に行ったりしたら苦労しそうだね」
「旅行?冗談じゃありません。
温泉とか銭湯とか、他人と同じ湯に入るとか考えられません。
移動の際、電車の吊り革や手すりにも触れません」
「でも、そんな君でもトイレには行くでしょう?」
「トイレのスリッパは、一度使ったら捨てますし、
トイレから出てきたら服を洗濯して、念入りにシャワーを浴びます」
毎日が大変な騒ぎでしょうね。
こういう潔癖症の女の子を
飲み会に連れていったりすると、面倒な事になりそうですね。
みんなでワイワイ言いながら店に入ろうとすると、
「皆さん、まず店に入る前にちょっと待ってください!
雑菌だらけの部屋に入ってはいけません!」
そう言ってみんなを足止めしておいてから潔癖ちゃんは、
予約していた部屋に大量の消毒液をまき散らすわけですね。
それだけではなくて、
置いてある箸やお皿にまで消毒液を噴射しまくるんですね。
全員が目が点になりながら、そんな食器は使いたくないので交換してもらうという、
店員さんに二度手間をかけるんですね。
飲み物を注文する時も、
「みんな、とりあえずビールでいいよね?」
「・・・あ、私はこれでいいですから」
カバンからペットボトルを取り出しましてね。
「それは・・・何なのかな?」
「煮沸した水です」
一同が微妙な空気になるわけですね。
『グラスを合わせるのが嫌だから』という理由で乾杯も拒否。
運ばれてきた料理には、唐揚げであろうが、サラダであろうが、
刺身であろうが、全てに消毒液をかけるので、
阿鼻叫喚の飲み会になってしまうんですね・・・
こういうタイプの子は、飲み会には連れていかない方が賢明のようですね。
微笑亭さん太