去りゆく才能たち
学生落語のチャンピオンを決める
【策伝大賞】の予選審査員を務めさせていただきましたが、
もうそれから十日以上経ちます。
毎回60人近い学生諸君たちの高座を見せてもらいますが、
本当に感心する事しきりで、審査をしているはずのこちら側が
面白い落語を見極める審美眼を
審査されているような心持ちになったします。
決勝に出た子たちはもちろんの事、
残念ながら出られなかった子たちの中にも
物凄い才能の持ち主がたくさんいます。
そもそもたった6分という持ち時間に合わせて
長い古典落語を刈り込んでくる(編集してくる)というのは
ある程度の落語的センスがなくてはできません。
素晴らしい編集能力で、ストーリーをキープしつつ
笑いの量も盛り沢山にあるという、
そんな高座を見せられると、感動すら覚えます。
しかし、よくよく考えてみると
こういった才能の塊みたいな若者の9割以上・・いや、ほぼ限りなく
100%に近い子たちが、普通に就職をして、落語の世界に進むわけではありません。
仕方のない事だと判ってはいますが、
これは本当に残念で勿体ない事だと思わずにはいられません。
明らかに落語の才能があるこの子たちが全員、落語家になったとしたら、
プロの落語界というのは、相当層が厚くなる事は確実です。
でも現実はそうはならないわけで、これは言ってみれば
【卒業後、野球から一切、手を引いてしまうイチロー選手の集団】を
毎年見送っているようなものだな〜と思ったりしています。
無責任に『プロの噺家になりなよ〜』なんてな事は言えませんから
あふれんばかりの落語的才能が
現実社会に埋没していくのを傍観するしかない私ですが、
このところ毎回、そんな歯がゆい思いを味わっています。
・・まあ、そのココロは、
才能のある若者は、さっさとプロになっていただいて
社会人落語界には来ないでくれというのが、
本音かもしれませんけどね(笑)
微笑亭さん太