弾くてあまた
【楽器の女王】というイメージがあるのは【ピアノ】じゃないかと思いますね。
その優雅で優しい音色は、
まさに女王と呼ぶに相応しい感じがします。
そんなピアノを自由に弾きこなしてほしいという願望のもとに、
我が子にピアノを習わせる親御さんがいらっしゃいますよね。
嬉々としてやる子もいるでしょうが、遊びたい盛りの子供にとっては、
ピアノの練習を嫌がる子が結構多いんじゃないかと思います。
一昨年亡くなられた
ピアニストの中村紘子さんが以前、テレビ番組に出られた時に
「ピアノの練習を嫌がる子供に弾かせるには、どうしたらいいでしょうか?」
という視聴者からの質問に答えを求められたんですね。
すると彼女は、目をまん丸くして心底驚いて、
「え?弾きたくない子が、どうしてピアノを習ってるの?」
恐らく中村さんには、
ピアノを弾きたがらない子がピアノを習っている状況というのが、
野球経験のない人間がドラフト一位で指名されるくらい、
ありえなかったんでしょうね。
生まれながらの天才である彼女にとってピアノは、
弾きたくて弾きたくてたまらない存在以外の何物でもなかったんでしょうね。
ただ世の中には【できる子】と【できない子】というのが存在しますからね。
「中村さんは当然【出来る子】だっただろうから判らないだろうけど、
【できない子】の場合は、決して弾きたくないわけじゃなくて、
弾きたいけど上手くできなくて、嫌になっちゃうんだよね。
それがやがて『どうせ何回やっても上手くできないから、
練習したくない』につながっちゃうんだよね」
「確かにそういうのはあるよね。
俺も子供の頃、興味もないしやりたくもないサッカーを親にやらされたんだよ。
才能もないから全くうまくならないんだけど、三年間もやらされたよ」
「でも三年やってたら、何か身についたんじゃないの?」
「ああ、身についたよ。
【楽しくないのに楽しいフリをするスキル】が」
やはり、『好きこそ物の上手なれ』という言葉は当たってるのかもしれませんね。
趣味程度で弾く場合はいいんでしょうが、
演奏家を目指すとなると、そんな事は言ってられないようですね。
自分の意志で『弾きたい』と思うような年齢になった時点でピアノを始めても、
演奏家になるには既に時間的に手遅れなんですね。
ですから本人の意志とは関係なく
幼児期にレッスンを始めさせて、数年後に適性があったかどうかを
確かめるというのが普通の流れなんだそうですね。
シンガーソングライターの矢野顕子さんは、
幼少の頃、鍵盤の隙間にカミソリを入れて
正確に鍵盤を叩く練習をさせられたそうですね。
練習が終わったら指が二十本に増えてたりなんかしてね・・・
その道を極めるというのは大変な事ですね。
微笑亭さん太