辞めるが価値
劣悪な労働条件で社員をこき使う【ブラック企業】という言葉が、
平成年間に認知され、よく使われるようになりましたよね。
そういったブラック企業の存在を
背景にして登場してきた人たちでしょうが、【退職届を業者に頼む人】
というのが出てきてますよね。
これは昔では考えられなかった人たちですね。
全国の労働局に寄せられる相談というのは、一昔前までは
『突然クビを言い渡されたけれども、どうしたらいいのか?』といったような
【解雇】に関する相談が多かったわけですが、
今は【解雇】よりも【退職】に関する相談の方が圧倒的に多いんだそうですね。
辞めたい若者たちが上司に、
「あの・・・仕事、辞めたいんですけど」
「何!?辞める!?ふざけた事言ってんじゃないぞ。
何のためにお前をここまで育ててやったと思ってんだ?
お前が辞めた事によって会社に損害が出たら、賠償請求するからな。
覚悟しておけよ!」
「・・・あの・・・辞めるのを止めます」
こんな会話が、全国のブラック企業内では日常茶飯事的に交わされ、
いつまでたっても辞められずに、会社の奴隷となっている若い社員が多いんですね。
こういう人たちの救世主とも言うべき存在が、
当人に代わって会社に対して退職の意向を伝えてくれる
【退職代行サービス】なんですね。
ある業者では、
月に三百人ほどの依頼があるという事ですから、大繁盛ですよね・・・
こういう業者が繁盛するのが、いい事なのかどうかはさておいて・・・。
そもそも、退職に会社側の承認は不要なんですね。
期間の定めのない雇用契約の場合、退職の申し入れから二週間で
自由に会社を辞められると民法で定められてましてね。
それでも、退職代行サービスを利用する人が増える一方というのは、
考えてみるとおかしな話なんですよね。
質の悪い会社だと、辞めたいという意志を上司に明確に伝えても
『とりあえず考えておくよ』とか『もうちょっと待ってよ』などと言って
はぐらかされるそうですね。
上司の営業の仕事で培ったノウハウが、
そんなところで発揮されてしまうわけですね。
それでも強く辞めたい意志を伝えると、SNS上で攻撃されたり、
トウシューズの中に画鋲入れられたりするそうでして・・・
そこで退職代行業者に頼むという事になるわけですね。
一回の費用は五万円ほどだそうでして、
「お前みたいな仕事のできない奴を雇ってやってるだけありがたいと思え。
お前程度の社員は、ごまんといるんだからな!」
と罵倒されてきたのが、五万で辞められるんだったら
その方が楽だという事のようですね。
ちなみにある退職代行業者では、
一度利用すると【次回割引】があるそうでしてね・・・これを利用する人は、
新しい会社でも同じ事を繰り返すに違いないと見透かされてるんでしょうかね。
「お前、何の仕事してるの?」
「退職代行業者に勤めてるよ」
「あ~知ってるよ。
会社を辞めたがってる当人に代わって、
その会社に辞めたい意志を伝えるサービスだろ」
「そうそう。でも、一つ悩みがあるんだよな」
「悩み?何だよ、悩みって?」
「今の退職代行業者の仕事を辞めたいんだけど、どこに頼めばいいのかな?」
その悩みは、なかなか大変そうですね。
微笑亭さん太