立ってのお願い
ビジネスホテル的な宿というのは昔からあったようですが、
日本のビジネスホテルに比べたら雲泥の差だったようですね。
中世イギリスのスラム街の最も安い宿なんというのは、
寝床など無くて、お客は上からぶら下げられた
紐につかまって寝ていたそうですね。
全くお金のない物乞いや逃亡犯などが
主に利用していたようですが、
さすがにその状態で寝るのは辛いですよね。
「・・・おや、久しぶりだな。俺の事、覚えてるか?」
「ああ、覚えてるよ。
以前、スラム街の安宿で一緒になった事があるだろ?」
「そうそう。
お前、あの時とは打って変わって、随分と上等な身なりしてるじゃねえか」
「うん、あれから金持ちの女と知り合って、いい仲になって、
今はその女に世話になってるんだよ」
「なるほど。
紐につかまって寝ていたのが、ヒモになって寝るようになったんだな」
旅行や出張で遠出をする場合、
飛行機を利用される方も多いと思いますが、
先日、ドイツのハンブルグで開催された【飛行機インテリアエキスポ】にて、
【アヴィオインテリアズ】というイタリアの航空会社の座席メーカーが、
新たな飛行機の座席を展示しましてね。
新しい座席の名前は【スカイライダー2・0】といって、
立って乗るタイプの座席なんですね。
この座席の最大のメリットは、飛行機に
より多くのお客を乗せることができる事ですね。
ただお客は、常に両足を床に支えてなくてはならず、
また座席の間の距離は五十八センチと非常に狭いんですね。
長距離飛行には不向きですが、数時間程度なら
我慢できるだろうという事ですが、
どこかスラム街の安宿を彷彿とさせる感じがしますよね。
このメーカーは、立って乗るタイプの椅子の設計図を
二〇一〇年に公開したんですが、
アメリカ連邦航空局の承認を得られなかったんですね。
それ以降音沙汰が無かったんですが、
ようやく実物が現れたんですね。
近い将来これを採用する航空メーカーも
現れそうだという事ですが、日本の会社の出張は、
この席がスタンダードになりそうですね。
「会社からの指示で、立ち乗りの席に乗らなきゃいけないんだよな・・・」
なんてんで渋々乗ってみたら、
立ち乗り席にいるのが自分だけだったら、
これはかなり恥ずかしい感じがするでしょうね。
この座席メーカーの会社、
さらなる新しい座席の形を模索して、会議をしてるんじゃないですかね。
「立ち乗りで乗る人数を増やせるんだったら、
横に寝かせてみたらどうだろう?」
「なるほど、上の空間も利用できますから、
積み上げれば四段くらいはいけそうですね」
「飛行機の中がカプセルホテル状態だよ。
あと立ち乗りの座席も、そのまま座席がせり上がって
機体上部から顔が出て、眺めを楽しめるようにしてもいいんじゃないか?」
「サンルーフみたいでいいですね」
「それから、女性の座席は無料にしてみたらどうかね?」
「えっ、無料にしちゃうんですか?
それでは損になってしまうのでは?」
「その代わり、【女性の膝の上に座る男性席】を三倍の値段で売るんだよ」
アイデアは、ドンドン出てきそうですね。
微笑亭さん太