とっとと、出すもの出しな!
「ちょっと!何で浮気なんかしたのよ!?」
「いいか?人間の細胞ってのは、絶えず新陳代謝を繰り返していて、
六年で全ての細胞が生まれ変わるんだよ。
爪も髪も骨も内蔵も、もちろん脳も例外じゃない」
「それが何よ?」
「つまり六年以上前の物質は、今の俺の体の中には何一つ無い。
物質的に見たら【別人】も同然だ」
「はあ?」
「お前と結婚して六年経ってるから、
お前と熱烈な恋愛の末に結婚した俺とは、
もう別人になってるわけだ。
従って、浮気をしても仕方ないんだよ」
ドヤ顔でそう語る夫の顔に、
奥さんのグーパンチが飛んできたそうですけどね・・・まあ、そうなりますよね。
適度な運動をして汗をかくと、
新陳代謝の働きが高まるという事で【発汗】は今や、
健康や美容のトレンドになってますよね。
遠赤外線サウナやホットヨガなどで汗をかく事は、
リラクゼーション効果があるだけでなく、
体の毒素を排出して健康を保つとも言われています。
【デトックス】なんて言葉も流行りましたよね。
ところが『汗をかいて毒素を排出する』という説は、
『八十五歳のお婆ちゃんがAKBのオーディションに合格した』くらい、
ありえない話である事が最新の研究で明らかになったそうですね。
デトックスに関しては、
科学者たちも長年密かに疑っていたようなんですが、
汗と一緒に毒素も排出されるというのは
都市伝説に過ぎなかった事が判明したというわけですね。
「汗をかいて毒素を排出するという話はウソなんだってさ」
「え~!?マジかよ~!
俺、体から毒素を出そうと思って、
毎日のようにサウナに入ってたのに、意味がなかったって事か」
「そんな事はないよ。
『ビールがうまくなる』という効果は証明されてるから」
そもそも人間が汗をかくのは体温を下げるためであって、
老廃物や有毒物質を排出するためではないんですね。
汗の成分の大部分は水とミネラルですが、
様々な種類の有毒物質も含まれてはいるので、
百%ウソというわけではないんですが、
その量はごくわずかだそうですね。
普通の人が一日四十五分間の激しい運動を行ったとしても、
一日の発汗量は、運動していない平常時の発汗も含めて、
せいぜい二リットルほどなんですね。
それだけの汗をかいても、含まれる汚染物質は
〇・一ナノグラム以下しか含まれていないんですね。
思わず『えっ、たった〇・一ナノ?』と言いたくなりますよね。
つまり、どんなに大量の汗をかいたとしても、
その日体内に摂取した汚染物質の一%すら
排出できないという事になるわけですね。
まあ確かに考えてみれば、汗で毒素が出るのなら、
『汗かきの肥満体の人は、物凄く健康』という事になっちゃいますからね。
微笑亭さん太