ぬか漬けよりさん付け
「・・・え?ひょっとして、宮田さん?ミヤっちなの?」
同窓会などで久しぶりに会った友達を、当時の仇名で呼んだりすると、
一瞬にして学生時代にタイムスリップしたような気がして
昔話に花が咲くなんて事は、よくありますよね。
【仇名】というのは、
人と人とを繋ぐアイテムのような側面があったりしますが、
今時の小学生は、そんな経験を味わえなくなる可能性があるようですね。
というのも今、
同級生や友達の名前を呼び捨てにしたり仇名で呼ぶ事をせず、
名字に【さん】を付けて呼ぶよう
指導される小学生が増えているんですね。
仇名で呼ぶというのは、
今の小学校では非常にイメージが悪いそうでして、
仇名で呼ぶ事で【いじめ】と捉えられる可能性があるからというのが
その理由なんですね。
各小学校では【仇名の禁止】や
【さん付け】などの丁寧な呼び方をするよう規則に定める事で、
いじめを防止しようとする動きがあるんですね。
実際に広島県のある公立小学校では【生徒指導規程】において
『人の名前は呼び捨てにしない。
仇名等で呼ばない』と定めている事を、
ホームページ上で公開してましてね。
仇名禁止の要因として二〇〇〇年代に、
いじめによる悲惨な事件が多発して、文科省による
【いじめの定義】が変わっていったからなんですね。
今のいじめの定義というのは
【心身の苦痛を感じているもの】とされていて、
仇名は体の特徴を捉えたものも多いため、
仇名禁止などの校則を定める学校が増えているんですね。
確かに昔の仇名というのは、
容赦ないところがあったりしましたよね。
「昔は、ひどい仇名を付けられる奴がいたよな。
俺の友達なんか、休み時間にいつも寝てたら、
仇名が【孤独死】になったからね」
「私なんか、髪の毛が剛毛で癖毛の上、量が多いでしょう?
学生時代、校則で三つ編みにしなきゃいけなかったから三つ編みにしてたら、
【しめ縄】って仇名付けられたのよ」
「何か失敗をしたりすると、
それをきっかけに仇名にされるって事もあるだろ?
俺のクラスに漢字が苦手な奴がいたんだけど、
国語の時間に教科書を読まされて、
その時【困った様子】ってのを【こまったざます】と読んじゃってさ・・・
それ以来、男なのに仇名が【貴婦人】になったよ」
「あ~そういう失敗きっかけってあるよね。
私のクラスにいた男の子は、体育の着替えの時、ジャージに袖を通したら、
洗濯の時にお母さんの下着が入りこんでたらしくて、
それが勢いよくポ~ンって飛び出したのよ。
次の日から彼の仇名は【パンティーマジシャン】になったわ」
「それは恥ずかしいね。
でもまだ学生時代ならいいよ。
俺、このところ会社に毎日、水筒を持っていってたら同僚に
【日本兵】って仇名付けられちゃったよ」
周りがほっこりするするような仇名だったら、
付けても構わない気はするんですけどね。
微笑亭さん太