爆笑落語に関する一考察
【落語というのは、なぜ演る人によって、こうも面白さが違うのだろうか?】というのを
折に触れて、しみじみと感じる事があります。
古典落語の場合、基本的にはストーリーも同じなら、喋ってる内容も同じです。
ところが演り手によって、抱腹絶倒になるかと思いきや
ツンドラ地帯のような寒々とした空気が流れる事は周知の通りです。
もちろん、落語的スキルの差とか経験の違いとかが面白さを左右する事は判っています。
しかし、面白い噺家さんの高座を聞いてると、【それだけではない何か】が
存在するのではないかと思ってしまうのです。
その人の持つ何とも言えない可笑しさの事を【フラ】と言いますが、
特にフラの強い人の高座を聞くと、この思いは確信に変わってきますね。
ー同じ事を喋ってるのに、なぜこの人が喋ると面白いのか?ー
私は多分そういう人からは【落語ウィルス】みたいな物が出ているんじゃないかと思います。
この落語ウィルスは保菌者である演者から放たれ、瞬く間に客席全体に広がり
その激烈な感染力で、お客さんを一人残らず【笑わざるをえない状態】にしてしまうのです。
落語ウィルスに汚染された人は、まさに熱にうかされたように笑い続け
どうしようもない快楽の坩堝(るつぼ)から抜け出せなくなります。
ところがこの落語ウィルスは感染力は強いものの持続力はなく
精々30分くらいで【治癒】の方向へと進んでいきます。
そして次に高座に上がった
落語ウィルスの【キャリア】ではない演者が喋りだすと
今までの興奮がウソのように、皆さん真顔で落語を聞き続けるわけですね。
落語ウィルス、恐るべしです。
この落語ウィルスに関する仮説を、今度学会で発表しようかと思っていますが
多くの演芸博士たちから、果たして賛同は得られるでしょうかね?
微笑亭さん太