毒喰らわばヘビまで
清潔こそ善とばかりに、ペンなどの事務用品が、
ことごとく抗菌仕様になりましてね。
しかしこういった菌にさらされない状態というのは、
かえって体の免疫能力を弱くするのではないかという事で、
最低限の菌には触れた方がいいみたいですね。
とは言っても、自らの体に毒物を注入するようなマネは、しない方がいいですよね。
アメリカにスティーブ・ラドウィンという
49歳になるパンクロッカーの男性がいるんですが、この方、
25年に渡ってヘビの毒を自らの体に注射してきたんだそうですね。
まさに常軌を逸した行動ですが、その結果、
体の中にヘビ毒に対する抗体が出来上がったそうでしてね。
そしてこの度、この男性の体から骨髄が取り出され、
35種類以上の抗体が取り出されたそうですね。
この方、何でこんな事をやっているのかというと、
ラドウィン氏は少年の頃からヘビが大好きで、
9歳の時に訪れたフロリダのヘビ園で、ビル・ハーストという方に出会ったのが、
毒を注射するきっかけだったそうですね。
このハースト氏は、西洋人で初めてヘビの毒を自分に注射し、
抗体を作る試みを行ったとされる方なんですね。
無謀すぎるハースト氏の試みでしたが、あろうことかラドウィン氏も同じように、
毒を注射して抗体を作る事に憧れに近い感情を抱いたそうですから、
常人には理解できない世界ですよね。
やはり【ヘビーなロッカー】ですよね。
ビル・ハースト氏は、致死量に達しない量の毒を
自分自身に入れて免疫を作るという【ミトリダート法】というのを実践されていて、
一日に百匹の蛇を素手で絞りまくってたそうですから、ワイルドですよね。
そして世界中を飛び回って自分の血を輸血し、作り出した抗毒血清で、
毒ヘビに咬まれた人を21人救ったそうですから、大したものですよね。
しかも彼は合計172回もヘビに咬まれたのに、100歳まで生きたそうですから、
ヘビに咬まれるのは健康にいいのかと思ってしまいますよね。
このハースト氏と同様にラドウィン氏も、実際にヘビの毒の注射を開始し、
それ以来25年間にも渡って週に一度の注射を続けてきた結果、
ヘビ毒に対する抗体が出来上がったというわけですね。
ただ、彼の血から作った解毒剤に副作用がないかという事が気になりますよね。
「先生、毒ヘビに咬まれたんですが、解毒剤を打っていただけますか?」
「それはいいんですが・・・ちょっと副作用があるんですよ」
「えっ、どんな副作用ですか?」
「一日中、パンクロックを聞きたくなるんです」
その副作用は、ちょっと困りますけどね。
微笑亭さん太