故人の石を尊重します
お墓の下に入るというのは常識だったわけですが、
その常識が徐々に変わりつつあるようですね。
少子高齢化による後継者の不在などで、
お墓を撤去して、寺などに遺骨の管理を任せる
【永代供養】に切り替える動きが広がっているようですね。
最近【墓じまい】なんて言葉を耳にするようになりましてね。
これは【閉眼】や【お性根(しょうね)抜き】などの
法要から撤去までを表した言葉でして、
いわば【お墓の閉店】ですよね。
まさかお墓にも【蛍の光】が流れる時代が来ようとは思いませんでしたけどね。
若い人は頻繁にお墓に行くという事はあまりありませんから、
自然とお墓の面倒を看る方は高齢者の方が多いですよね。
お墓というのは結構長い階段のある
傾斜地などに建てられている事がありますから、
年々行くのがしんどくなってくるわけですね。
どうかすると、お墓参りに行く途中で
事切れてる方もいたりしましてね。
『死因・墓参り』なんてのは嫌ですよね。
お墓というのは、お金がかかる上、自由に売買できませんし、
設置義務があるわけではありません。
生きている人間が生活するので精一杯な状況では、
廃れるのも致し方ないのかもしれませんね。
昔はお墓がないと恥ずかしいと思われた時代でしたが、
魂を大切にしていれば、形にこだわる必要はないと思えば、
墓じまいという選択肢に行き着くのかもしれませんね。
墓じまいによって不要になった墓石の処分を行うのは、
石材店という事になるわけですが、本来は墓石を作るのが商売のはずなのに、
今や破壊する仕事の方が繁盛しちゃってるというのは皮肉な話ですよね。
『心を込めて作った墓石をつぶすのは、商売抜きで悲しい』と
漏らす職人さんも多いようでして、
なかなかビジネスとは割り切れない部分もあるんでしょうね。
墓石も結構高いですから、
もう少し手軽な値段で買えるような素材にしたらどうですかね。
石ではなくて粘土でできた【粘土墓】とかね。
お墓参りに行くたびに、
墓石の形が変わってたりして楽しいかもしれませんね。
あと軽量化に特化して、
墓石が綿でできた【脱脂綿墓】とかね。
雨が降ると墓石が膨張するため、お得感もありますよね。
他にも、お墓参りに行く一日だけ
急遽墓石を設置してくれるという、年イチ契約のお墓とかね。
「ウチは四月一日だけお墓を設置してもらうので、
【四月墓(馬鹿)】と呼んでます」
しまいには墓石を【アイスの棒】で間に合わせたりしましてね。
庭にある【金魚のお墓】の横に【パパのお墓】と書かれた
アイスの棒が立ってるわけですね。
「パパは何で死んじゃったの?」
「うっかり腐った食べ物を食べてしまって、
食あたりで死んじゃったのよ・・・」
ふと見るとアイスの棒に【当たり】って書いてあったりしましてね。
こんなお墓も、実際に出てくるかもしれませんが、
こういう手抜きのお墓にしてしまうと、
後で『何であんないい加減なお墓にしてしまったんだろう・・・』と
後悔するでしょうね。
こういうお墓の事を【あさ墓】と言ったりするわけですね。
微笑亭さん太