沈黙は金魚
人間、ある程度の年齢に達すると、
魚派にシフトする方は結構いらっしゃいますよね。
生でも、焼いても、煮ても、
揚げても美味しい食材ですが、
我々が何の抵抗もなく食べられるのは、
魚が【沈黙の生き物】だからじゃないでしょうかね。
もしも魚が【大声で鳴く生き物】だったら、
こんなに魚を食べる文化は普及しなかったかもしれませんね。
包丁を入れた瞬間『ギャ~~ッ!!』なんてんで叫ばれたら、
とても板前さんたちは、さばけないと思いますね。
だからこそ、鳴くニワトリをさばく時には、
最初に首を落とすとういうくらいですからね。
包丁で三枚におろされる魚も痛そうですが、
ウナギとかアナゴなんかの【目打ち】される魚は、
もっと辛そうですよね。
それどころか、魚は人が触ると体温で火傷すると言いますから、
手で触れた時点で
『熱いよ、熱いよ!ヤバいよ、ヤバいよ!』てな感じで、
熱湯風呂に入れられた出川さんみたいなリアクションを
とるかもしれませんね。
そうなると、漁業関係者が耳栓を付けるようになって、
釣りをする人もいなくなるんじゃないですかね。
ただ、人間というのは残酷な生き物です。
魚が鳴いたら鳴いたでもって、
「いや~、この【活け作り】というのはいいですな~。
魚の最期の言葉を聞きながらその身を食べるというのは、たまりませんよ」
「私はこの【踊り食い】が好きですね。
食べた後、自分の胃の中から、
魚の断末魔の声が聞こえてくるというのは・・・
う~ん、エクスタシー!」
なんてんで、趣味の悪い食通の方々もいらっしゃるんじゃないですかね。
【ヘイケガニ】は、その見た目の怖さから
人の食用になることを免れたと言いますから、
視覚や聴覚といった人の五感に訴えるってのは大事かもしれませんね。
何の抵抗もなく魚を食べる人間は残酷かもしれませんが、
魚が魚に対して優しくするなんて事があるようですね。
北海道の日高管内平取町に住む自営業の男性が、
水槽で黒い出目金と赤い金魚を飼ってましてね。
ところが出目金がうまく泳げなくなってしまい、
水槽の底に横たわった状態になってしまったんですね。
その出目金、エサを食べようと
水面まで泳ごうとするんですが、うまく泳げない。
すると赤い金魚が出目金を下から押し上げてやり、
エサを食べやすくするようになったんだそうですね。
この映像がネットにアップされて話題になったんですが、
これ言ってみれば、金魚が金魚を介護してるみたいなものでして、
そういう優しさが魚にもあるんですね。
でもその飼い主の方はそれを毎日見ていたら、
寿司なんかが食べにくくなるでしょうね。
言い知れぬ罪悪感を感じるんじゃないですかね。
どういうつもりでそんな行動を取っているのか、
もしも金魚が喋れたら聞いてみたいですよね。
「金魚さん、何であんな
エサを食べさせてあげるような行動をしてるんですか?」
「いえね、相方の出目金がもう長くないだろうと思いまして、
太らせてから食おうかと思いまして・・・」
案外、シビアな事を考えてるかもしれませんね。
微笑亭さん太