客席に座る神
寄席に来て下さるお客さんは、我々にとっては正に神様です。
お年を召したお客様などは、
神様を通り越して『仏様』に見えたりします。
我々も自分が演者でない時は、客席に回る事もありますが、
他人の高座を見ている時というのは、
『何か盗めるもの、学べるものはないだろうか?』と思ってますので、
凄く険しい表情で見ている事が多いです。
寄席のお客さんとしては『失格』ですね。
『理想的なお客さん』というのは、
どういう人だろうかと考えてみたんですが、
まず何といっても『よく笑う方』ですよね。
体の中に『笑い袋』が内蔵されてるんじゃないかと思わせるような
笑いの箍(たが)が外れ気味の方がいいですね。
そして『笑うべきところで笑ってくれる方』ですね。
いくらよく笑ってくれても、
他のお客さんと著しく笑いのツボが違う場合というのは、
『何でこの人、ここで笑ってるんだろ?』的空気が会場に流れて、
おかしな雰囲気になる事がありますからね。
ましてや、ず~っと笑ってる方というのは、
演ってるこちらが凄く不安になったりします。
あと結構貴重なのが『忘れっぽい方』ですね。
「ねえねえ、昨日、落語見にいってきたの」
「そうなんだ。面白かった?」
「凄く面白かったわよ~。もう大爆笑しちゃった!」
「へえ~、どんな噺だったの?」
「うん、忘れた」
毎回、こういう会話ができる方が理想ですね。
この方の前なら、同じネタを何度でもできますからね。
そして多分、何度演っても、
初めて聞いたかの如く笑って下さるに違いありません。
そして極めつけは、寄席が終わった後、楽屋に来て、
「これで、自分たちの寄席でも建てなさい」と、
3億くらいの小切手を、ポ~ンと置いていってくれる方ですね。
まだ『そういうお客様を見た』という、目撃情報すらないんですが、
そろそろ現れてくれるんじゃないかな~と、
密かに期待してるんですけどね…。
微笑亭さん太