神出鬼没な、演出奇抜
竜宮亭無眠さんが『仏師屋盗人』というネタを演られたんですが、
その中で、立膝にした膝頭を仏像の頭に見立てるという
演出をしておられました。
私は初めて見た演出方法だったので、無眠さんに、
「面白い演り方があるんですね~」と言ったら、
「そうなんですよ。これを演る時には、
立膝の隙間から下着が見えるといけないので、
Tバックは履かないようにしています」と仰ってました。
さすが、アマチュア名人は、意識レベルが高いですね。
落語というのは、
『着物を着て座布団に座り、上半身のみで演じる芸』という、
ガイドラインはあるわけですが、どの程度まで
『演出』というのは許されるものなんでしょうかね?
今は亡き、桂枝雀師匠なんかは(私の記憶違いでなければ)
『口入屋』の中の大戸を閉める場面で、
完全に後ろを向いて、お客さんにお尻を向けた状態で
大戸を閉める仕草をしたりとか、
『高津の富』では、ハズれたと思った富札を捨てた後、
膝立ちになって座布団から歩いて出て、
立ち去るシーンを表現したりと、
かなり、やんちゃな演出をされていました。
落語はコントではないので、
小道具の持ち込みは、原則禁止なわけですが、
以前、ネタの都合上、扇子を2本使った事があります。
プロの師匠でも、2本の扇子を使われたのを見た事がありますが、
本来は無いはずの、『2本目の扇子』を見ただけで、
お客さんは笑ったりしますね。
扇子にも、『出オチ』がある事が判りました。
『3D』という手法が話題になっている昨今ですが、
これからは、お客さんがメガネをかけると、
噺家が目の前まで飛び出してきたり、
背景がCGで江戸の町並みになったりなんて事もあるかもしれませんが、
そうなると、これはもう『落語』ではなくなっちゃいますよね。
落語における最大の演出というのは、
『お客さんの想像力』ですから、
それを喚起するために、我々、演り手側の人間は、
芸を磨いていかなければならないと思います。
まだ私が学生時代に、林家しん平師匠の高座を見たんですが、
そこでしん平師は、ネタの途中に高座の上で、
『…実は、私はウルトラマンなんです!』と言って、
『ウルトラマン』の衣装に着替えられた事がありました。
私は呆気にとられてしまいましたが、客席は大爆笑。
…ただ、『3分』しか持ちませんでしたけどね。
微笑亭さん太