迷える子羊…いや、カモシカ…いや、ハナシカ
ネタが始まってすぐの最初のひとネタ、
いわゆる『ツカミ』というのが大切です。
冒頭で笑いを取る事によって、お客さんの緊張感をほぐし、
『この人面白そうだな…やってごらん、聴いてあげるから』という、
お客さんに聴いていただく姿勢を作る事ができます。
講演なんかでもそうですが、
人前で話をする時というのは、この『ツカミ』が重要ですよね。
落語の場合、このツカミが膨らんだものが、
『マクラ』という事になります。
本題に入る前の漫談的な部分ですね。
世間話などをふる事によって、お客さんとの心の距離を縮めたり、
その後の本題を楽しむために必要な、予備知識なんかも織り込んだりします。
それは噺家さんによって演り方は色々で、
たっぷりマクラをふる方もいれば、
ほとんどふらずに本題に入る方もいます。
私はマクラを演るのが好きなので、
ついつい長く喋ってしまいますね。
持ち時間の半分以上、マクラを喋ってるなんて事もしばしばです。
マクラネタを全て自分で作るようになってからは、
特に長くなりましたね。
ところがこれは、
あまり良くない事だと自分では思ってます。
というのも、自分の作るネタは時事ネタが多い分、
とても『アクの強いネタ』になってるんですね。
ですから、お客さんにマクラで沢山笑っていただいた時ほど、
本題に入るとトーンが落ちるんです。
これは自分でも、痛切に感じる事が多々あります。
客席の温度は徐々に上げていくのがベストなのに、
最初に『マックス』を迎えてしまう事による弊害ですね。
ちょうど、
唐辛子やにんにくをバンバンにきかせた中華料理を食べた後、
薄味の京料理を食べさせられるみたいなもので、
どうしても印象が薄くなってしまうんですね。
作りこんだマクラを演れば演るほど、
自分の首を絞めている事になってます。
『マクラのふり過ぎ』を嫌うプロの師匠方も多いです。
昨年、柳家権太楼師と共演させていただいた時にも、
批評で、そういうダメ出しをされました。
『わざとマクラでウケないように演るのも一つの方法だ』とも
師匠は仰いましたが、そんな器用なマネはとても私にはできません。
私の芸風としては、
本題を演った後にマクラを演るべきなのかもしれません…
じゃあ、マクラであまりウケなかった時なら、
本題はいいんじゃないかと思われるかもしれませんが、
そういう時は、マクラ以上に本題も『惨敗』になります…(涙)
この悩み、結構マジに、ず~っと悩んでるんですよね…
微笑亭さん太