古典落語『三枚起請』考
今日は、同じく廓噺の大ネタ、
『三枚起請』について書いてみたいと思います。
私はこのネタは
学生時代から演っていましたが、
何度かけても、微妙に判らない事があります。
『三枚起請』あらすじ
http://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E6%9E%9A%E8%B5%B7%E8%AB%8B
この中で喜瀬川花魁は、お客さん三人に、
夫婦になる誓約書とも言うべき起請文を
それぞれ、計三枚も書きます。
起請文は本来、一枚しかありえないわけですが、
それを三枚も書くというのは大変な事です。
騙された三人が激怒するのは無理ありません。
復讐したくなる気持ちも判ります。
ひょっとしたら、もっと他のお客さんにも
書いていたかもしれませんね。
しかし、この【起請文を複数書く】という行為、
マズイ事は判るんですが、
果たして【どの程度のものか?】というのが
今いち判らないんですね。
サゲ前で花魁が
「あたしたちはね、客を騙すのが商売なんだよ!」と
タンカを切りますが、
そのお客さんを騙す手練手管のひとつとして
使っていいものかどうかの程度という事ですね。
当時の吉原で、
この【量産型起請文】で騙された人が、
結構いたのかどうかという話ですね。
【割とある事】なのか、【まず無い事】なのかによって
演り手の心持ちが変わってくると思うんですね。
①絶対にやってはいけない事
②やってはいけない事だが、やってしまう花魁もいる
③やってはいけない事だが、結構ある事
④やってはいけない事というのは建前で、割と頻繁にあった
⑤日常茶飯事
どのレベルなのかが、判らないんですよね。
①や②だったら、
騙された三人が可哀想なので、
お客さん寄りの気持ちで演り、
あくまで花魁を【悪役】として扱いたい感じがあります。
しかし④や⑤なら、吉原の価値観としては
騙された方が悪いという側面がありますので、
三人を、より道化な感じで描くべきかな~と思います。
そこの温度が判らないので、
気持ちの持っていき方が、
今ひとつ中途半端なきらいがあるのです。
細かい事ですし、
どうでもいい事なのかもしれませんが、
このネタをやるたびに、
そこが気になって仕方がなかったりする私です。
微笑亭さん太