将棋と落語
落語の中にも『将棋の殿様』『浮世床』『のめる』といった
将棋を扱った噺というのは
ちょくちょくありますよね。
私見ですが、【落語】と【将棋】は、
共通点があると思っています。
プロ棋士の方々というのは、
我々常人では思いもつかないような妙手を指されます。
一見、駒をタダで捨てるような、
ど素人みたいな手を指しながら、
実はそれには壮大な深謀遠慮があり、
後々物凄くきいてくる布石だったりするのです。
それには落語において、
後々の【サゲ】を生かすような
【フリ】に重なる部分があるのです。
『なるほど、そういう事なのか!』と
【数手先の手】で、
【フリに対するサゲ】で、
見る者、聞く者をうならせる、
そんなところに共通点を感じます。
そして対戦相手の【王将】を詰めるための
終盤の【寄せ】というのは、
まさに落語のサゲそのものですね。
綺麗に一局を終局させる、
それが棋士の、噺家の
【美学】のような気がしているのです。
【寄せ】こそ【寄席】、でしょうかね?
先日、棋士の羽生善治3冠王が、
森内名人から【名人】のタイトルを4連勝で奪取され
4冠王となられました。
森内さんも素晴らしい棋士なんですが、
私はずっと、羽生さんのファンでしたので、
本当に嬉しく思っています。
羽生さんが天才であり、
最強棋士のひとりである事は、
誰もが認めるところなんですが、
彼の凄さというのは、その将棋スタイル、
すなわち【棋風】なんですね。
非常に高レベルで争っているトップ棋士の方々ですから、
普段戦っている相手も物凄く強いわけで、
そう簡単に勝てるものではありません。
だからこそ、【得意な戦法、戦形】を持ち、
相手をその【自分のワールド】の中に引きずり込もうと
苦心をされるわけです。
ところが羽生さんは、
どんな戦法でも指される、オールラウンドプレイヤーなのです。
超一流の棋士たちを相手にしても臆する事なく
どんな戦形、未知の形へでも
踏み込んでいかれるのです。
それが、決して負けは許されない
タイトル戦などの大一番においてもです。
これは、なかなか出来る事ではありません。
彼の目には、目先の勝利ではなく、
根本的な自分の棋力を上げていくという、
もっと先の世界が見えているに違いありません。
それに比べ自分が高座に上がる時は、
目先の【ひと笑い】に執着して、
比較的ウケが取れそうな噺ばかりを選び、
苦手なジャンルからは逃げてばかりいるのです。
羽生さんとは雲泥の差です。
・・・羽生さんと比べるなって話ですけどね(笑)
将棋という、
全く違う世界の方ですが、
これからも我が手本として、
羽生4冠王を応援していきたいと思います。
微笑亭さん太