特上よりナミダ
なんてな事を仰る方がいらっしゃいますが、
人間笑い過ぎると涙が出るものなんですね。
しかし一方で、
「この間行った寄席、涙が出るほどつまらなかったよ~」
つまらなくても涙が出るんですね。
つまり、つまらないにしても面白いにしても、
ある一線を越えると涙が出るようでして、
笑いと涙は非常に近いところにあるんでしょうね。
落語家が、最初からお客さんを泣かせる事のみの目的で
高座に上がる事は、まず無いでしょうが、
最近、泣かせる話のみを専門に語る
【泣語家(なくごか)】と呼ばれる方がいらっしゃるようですね。
【泣石家芭蕉(なかしやばしょう)】という芸名を持つ葬儀屋さんの
30歳の男性なんですが、老人ホームなどを回って、
戦争体験などの悲しい話や人情話で、お年寄りに涙を流してもらい、
ストレス解消に役立てているようですね。
この方、葬儀屋さんをやってらっしゃるので、
遺族が涙を流す事で心の整理をつける姿を何度も見て、
涙の効用を認識されたそうですね。
やはり【実話】の持つポテンシャルは凄いわけですから、
世のお父さん方も泣語家にはなれるんじゃないですかね。
「この間、家で寿司の出前を頼んだらね、女房と子供たちは【特上】で、
私だけ【かんぴょう巻き】だったんですよ…この扱い、どう思われますか?」
なんて体験談を語れば、客席の号泣は間違いなしですよ。
さらに、
「だからね、もう家族に嫌気が差して、ちょっと浮気をしたら、
女房が浮気現場に乗り込んできて、包丁振り回して大変な事になりました」
なんてな事を語れば、別の意味での
【刃傷話】になるんじゃないでしょうかね。
思い切り泣きはらした後、
妙に気分がすっきりしたという経験をお持ちの方も多いんじゃないかと思います。
今、大人たちが集まって、泣ける映画などを見て人前で堂々と涙を流す、
【涙活】なんというイベントがあるそうですね。
実際に涙が心を癒す効果というのは医学的にも認められていて、
世間体、体裁などに構わず泣く事は、
打ちひしがれた状況から脱するには、とても大切だそうですね。
ですからもっと涙を出して、色々な事に活用すべきですよね。
物事をくじ引きで決める時には、まず誰かが泣いて、
その涙の跡を辿ってくじにするという
【ナミダくじ】なんてはいいですよね。
あと、バーなんかに入って、
「バーテンさん、そのカクテルは何?」
「これは、失恋したばかりの女性の涙入りカクテルです」
「じゃあ、それを貰おうかな」
なんてんで飲み干した途端、
「すみません、お客さん!今のカクテル、【失恋した女性の涙】じゃなくて、
【切れ痔で苦しむ親父の涙】入りでした」
これはもう、即行で全部吐き出しそうですね。
微笑亭さん太