極上の素材
鳴り物入りで始まったNHKの大河ドラマ『八重の桜』ですが、
視聴率の方は、15%に届かない事も
珍しくないというくらいに苦戦しておりましてね。
やはり織田信長や豊臣秀吉といった定番もの以外は
当たりにくいというジンクスは健在のようですね。
しかし定番ものも、やり尽くした感のある大河ドラマにあって、
歴史上そこそこ有名でありながら、
『あれ?この人、まだやってないんだ』と思うような
偉人は何人かいましてね。
江戸末期から明治にかけて活躍された、
【ジョン万次郎】なんて方も、その中の一人です。
この方、江戸幕末から明治にかけて活躍された方で、
日米和親条約の締結に尽力し、
その後通訳や教師として活動されたんですが、
とっくに大河ドラマでやっていてもおかしくないほど、
波瀾万丈の人生を歩んでおられましてね。
元々、土佐の漁民として少年時代を過ごしていた万次郎少年は、
ある日、漁に出て台風に巻き込まれ、仲間4人と漂流してしまうんですね。
船は運良く太平洋の孤島へ流れ着くんですが無人島で、
そこで雨水を飲み、鳥の卵を食べて生き延びるという、
【元祖・黄金伝説・無人島生活】みたいな方でしてね。
幸運な事にアメリカの捕鯨船が通りかかり救助されるんですが、
捕鯨船は日本へは行かず、ハワイへ向かうんですね。
「どうして日本へ行ってくれないんですか?」
「君の国、鎖国中でしょう?」
「しまった~!」みたいな感じでしてね。
仕方なく万次郎は、船上で捕鯨の仕事を手伝いながら英語を習得していきましてね。
「鯨は大きな声でホエール!…船で転んでシップを貼る!」なんてんで、
中学生の単語帳みたいな覚え方してたりしましてね。
そのまま万次郎を乗せた捕鯨船は、アメリカ本土へ帰港。
彼はアメリカ本土で、船長の養子として学校へ通い出すんですが、
成績優秀で大学にも通い、船舶技師や捕鯨技師として
一級の人材になっちゃうんですね。
捕鯨船員をしながらアメリカ人として暮らし、
アメリカ人の彼女も作って、今で言う【リア充生活】を送るわけですが、
ホームシックになった万次郎は日本帰国を決意するんですね。
しかし資金がないので、ゴールドラッシュにかけて金山へ行き、
奇跡的に大金鉱を掘り当て、超金持ちになるという…これがドラマだったら
『安っぽい脚本書くんじゃない!』と脚本家が怒られそうなほど、
ご都合主義の人生を歩んじゃうんですね。
万次郎は大金をはたいて遠洋漁業船を購入し、日本へ帰ってくるんですが、
この時、土佐漁民としての身分を剥奪され、
以後は農民として陸で暮らすようになります。
時は幕末、江戸にペリーが来航し、
英語が出来ない幕府は交渉ができずに困り果てたんですが、
ここで、アメリカ帰りの万次郎の噂が幕府に流れましてね。
農民で英語万能な万次郎は、通訳として江戸城へ呼ばれるんですが、
江戸城には武士しか上がれません。
「城には武士しか上がれませぬ」
「じゃあ君、今日から武士ね」
…ここでも、ご都合主義発動。
武士になった万次郎は通訳として大奮闘していくという、
大河ドラマで扱っても、3年分くらい脚本が書けそうな人生なんですね。
ドラマの素材としては申し分ないと思うんですが、
いまだにドラマ化されない理由はやはり、
途中からアメリカ生活になるので、
キャストやロケ地の調達が大変だからでしょうかね?
微笑亭さん太