積みと罰
毎度お馴染み、悪質商法の出前講座です。
講座の始まりは10時からだったんですが、
私は9時過ぎくらいには現場に着いて待っていると、
間もなく、市役所のスタッフの方が車でお見えになりました。
「おはようございます」
「…あ、さん太さん、おはようございます。
じゃあ、高座の準備しますね……あ!!」
「どうされたんですか?」
「高座道具を積んでくるのを忘れた!!」
確かに、
いつも荷物がいっぱい積まれている車の荷台が、ガラ~ンとしています。
「もうせん、座布団、CDラジカセ、マイク、スピーカー、
みんな忘れてきちゃいました!」
…しかし、めくり台だけは乗っているという、謎のチョイス。
「すみません、市役所まで取りに行ってきますね。
講座の開始時間を少し遅らせるよう、頼んでおいていただけませんか?」
そう言って慌てて出て行かれたので、呼んで下さった会の方に
「開始時刻が10~15分くらい遅れるかもしれません」と告げると、
「判りました。…じゃあ、その間、
会長さんの楽しいお話でつないでもらえますか?」
「ワシの?いやいやいや、とてもそんな事は無理だよ」
と仰りながら、満更でもない表情でした。
ところが、市役所への往復の道が空いていたとみえて、
意外に早くスタッフの方が戻ってみえました。
サクサクと準備を終えると9時50分、
バッチリ定刻には始められる感じとなりました。
「お待たせしてしまって、すみませんでした。
ちゃんと時間通り、10時から始められますので」
「ああ…そうなの…」
スタッフの方の言葉に、幾分寂しげな表情の会長さん。
結局、10時から少し、
会長さんのありがたいお話タイムになりました。
……喋りたかったんですね(笑)
お客さんもよく笑ってくれたんですが、
色んな意味で楽しい出前講座でした。
微笑亭さん太