動物的な変身願望
【害獣駆除の補助金】というのを国が新設しましてね。
シカ、イノシシ、サルなどを駆除すると、
一頭当たり8千円程度が支給される事になったんですね。
ところが、それを受け取るためには、
駆除した動物の写真に加え、両耳や尻尾、
牙の実物を提出しなければいけないんですね。
これは、一頭の動物を何度も撮影しての【水増し請求】を防ぐためなんですが、
これに対して猟師の皆さんが、
『手間がかかる上、精神的な抵抗が大きい』と反発してましてね。
そりゃそうですよね。
いくら害獣とはいえ、イノシシの両耳を出して、
『耳を揃えて払ってくれ!』とかは言いにくいですもんね。
害獣扱いされて駆除されるのは嫌ですが、
時には『動物になりたい』などと思った方もあるんじゃないかと思います。
『猫になってゴロゴロしたい』とか
『犬になってイケメンに甘えたい』といった空想は、
日頃の欲求不満を表していると言われてましてね。
空想は、心をストレスから守る防御手段であり、
重要なストレス解消の方法だという事ですね。
『なれるとしたら、どんな動物になりたいですか?』という質問をした時、
一番人気の高いのが【ナマケモノ】だそうですね。
人気の理由は、のんびりと木の枝につかまって、
ウトウト寝ているイメージからなんでしょうが、
ナマケモノは筋肉量が少なく運動量も乏しいので、
自然界では食料の確保が十分に出来ないんですね。
摂取カロリーの少なさを補うために、
なるべくエネルギーを使わないよう木の上でじっとしているわけです。
つまりナマケモノは、必死で、命がけで怠けているわけですから、
彼らなりに大変なんですね。
なりたい動物を神様にリクエストしたら、実際ならせてくれたらいいですよね。
「確か【仕事中毒の男】が
【ナマケモノ】になりたいって言ってたよな?どうなったの?」
「ナマケモノにしてやったらさ、
働きたい、働きたいって欲求が抑えきれなくなって、病気になっちゃったよ」
「それは悲劇だね。
【肉食系男子】が【ニワトリ】になりたいなんてのもあったよね?」
「ああ、あったね。ニワトリになったお陰で、
肉食系から【うこっ系】になっちゃったよ」
「何でも上の言う事に従う【イエスマン】の男が
【ペンギン】になりたいって案件は?」
「あれは、イエスマンだから、【肯定ペンギン】になったよ。…そっちには、
【何にでもしょう油をかける人】が【犬】になりたいなんてのがあったよね?」
「ああ、あれはね、【ブルドッグ】にしてやったら、
ソースしか受けつけなくなっちゃったみたいだよ。
…【野心家の男】が【バッファロー】になりたいなんてリクエストもあったね」
「うん、だからバッファローにしてやったんだけど、
相変わらず野心家なところは直らないみたいだね。
仲間うちで色々と企んでるせいで、
【野牛一族の陰謀】なんて呼ばれてるみたいだよ」
なんてんで、神様も色々大変なようですね。
微笑亭さん太