見る側から見られる側へ
ユダヤ人を大量虐殺した事というのは、あまりにも有名です。
そのドイツの首都ベルリンにあるユダヤ博物館で、
非常に変った『展示』が行われているそうですね。
それは今月まで続いている
『あなたがユダヤ人について知りたい全ての真実』
という特別展の会場にあるんですが、
ユダヤ人の男女をショーケースに入れて展示をするという事なんですね。
要するに『生きたユダヤ人』を見せているわけでして、
かなりセンセーショナルな試みですよね。
3月から始まったこの催しでは、
ユダヤ人ボランティアの方が交代で展示されてるんですね。
ケースの下には、
『ドイツにはまだ、ユダヤ人はいるのか?』と書かれてましてね。
ケース前面にはガラスがないので、
お客さんは展示物と会話を交わす事も可能でしてね。
当然、展示物がトイレに行ってたり、
食事休憩を取ったりする事もあるわけでして、挑発的な試みの割には、
館内にはまったりとした空気が流れているようですね。
しかし人間をモノ扱いするかのような展示ですから、
人間の尊厳を無視してホロコーストを実行した
ナチズムを想起させるという事で賛否両論あるようですね。
なぜこんな思い切った展示に踏み切ったのかというと、
過去の重すぎる負の歴史ゆえ、未だにぎこちないドイツ人とユダヤ人の関係を、
何とか変えたいという思いからだそうですね。
幸いその思惑が当たり、
『おぞましい』とか『不道徳だ』という批判がある中、
特別展への来場者数は好調に推移してるそうですね。
考えてみると『見る側』と『見られる側』というのは
紙一重なのかもしれませんし、いつ何時、逆転するかもしれませんよ。
動物園なんかでもそうです。
今は人間が動物を見に行ってますが、
逆に動物たちが檻に入った人間を見に来る
『人間園』なんてのもありえるかもしれません。
トラの親子が人間を見に来ましてね、
「パパ、この人間美味しそうだから食べたいな~」
「よしなさい。今人間を食べると、晩御飯が食べられなくなっちゃうから」
なんてんで、人を食ったような会話をしてましてね。
その隣では犬が、
「こいつら、嬉しい事があっても尻尾振れないから可哀相だな~」
同情してたりするんですね。
中年のおじさんが入ってる檻の前ではスカンクが、
「…うわっ!こいつら、俺たちより臭いにおいを出してやがる」
なんてんで、濃厚な加齢臭に驚いてたりするんですね。
セレブなご婦人が入ってる檻の前では、
「母さんは、こいつの持ってるバッグにされたんだ…」
ワニの子供が涙ぐんでますしね。
連れ立ってやってきた、ペリカン、クロネコ、カンガルーは、
「こいつらに、荷物運ばせたいな~」
なんてな事を言ってたりするという、動物たちの本音が垣間見えそうですよね。
微笑亭さん太