ワイルドじゃない事故
テレビ朝日の特別番組収録中に胸椎を骨折し、
全治三ヶ月の怪我をしてしまったようですね。
千葉県習志野市内のプールで
高さ10メートルの飛び込み台から着水した際、骨折したという事ですが、
芸人さんがバラエティ番組の収録中に怪我をするという、
こういったニュースは、定期的に起こったりしています。
そしてその手の報道を見るたびに、
私は非常に残念な気持ちになります。
よく芸人さんが番組で、無理矢理バンジージャンプをさせられたり、
ワニと対決させられているのを見た視聴者が、
『あれはけしからん!ひどい!』と、クレームを寄せる事があります。
それに対して若手芸人たちは、
『俺たちはイジられてナンボなんだから、余計な事を言わないでくれよ』と
若干、『営業妨害』のように思う事もあるようです。
それで仕事をもらってるんだから、放っておいてくれよ、
というところでしょうか。
実際、『熱湯風呂』は、実は『適温』だったり、
『激アツおでん』も『食べごろの温度』だったりして、
芸人が熱がっているのは『演出』だという事はよくあります。
それはそれで面白く見られれば、成立している『やらせ』だと思っています。
ところが中には、『芸人はイジられてナンボ』という大前提を隠れ蓑にして、
かなり危険な事を強要している番組が存在している事も事実です。
そうやって作る『お笑い』は、果たして『お笑い』と言えるのでしょうか?
人間は『人の不幸を笑う』という性(さが)があると思います。
落語でも、例えば『愛宕山』なんて噺では、
お金に目がくらんで、狼が出るという深い谷底に降り立った幇間が、
帰りの事を考えてなかった事に気付いて、狼に食われるんじゃないかと
慌てふためく様子を見て、お客さんは笑います。
『岸柳島』なんて噺では、
渡し舟の上で威張りちらしていた若侍が、向こう岸に置き去りになり、
今まで大人しくしていた舟の客たちが、侍に向かって一斉に悪口を浴びせます。
ところが、その侍が川に飛び込み
舟底に穴を開けにくるようだと知った途端、大騒ぎになります。
そのめちゃめちゃうろたえる客たちの様子に、お客さんは笑うわけです。
人は『自分が安全圏に置かれている状況での人の不幸』というのは
面白がるものだと思います。
そういった法則を利用して作られた
落語や漫才、コントのネタは、実に沢山あるでしょう。
でもそれは、現実に起こってないから、
悲惨な状況になってないからこそ、安心して笑えるものだと思います。
『愛宕山』の幇間が、
狼の群れに寄ってたかって無残に食われるところを見て笑えないでしょうし、
『岸柳島』の客たちが、
舟を沈められて、『助けて~!』と叫びながら
全員が溺死するところを見て大爆笑なんて事はないと思います(笑)
やはり、あってはならない事は、
あってはならないのです。
今回の事故でも、テレビ局は安全対策は万全だったと言ってますが、
仮にそうであったとしても、『起こってしまったらアウト』なんだと思います。
『努力をしたから、結果が悪くても勘弁してね』という理屈は、
この問題に関しては通じないと思います。
『安全に終える』、その結果が全てなんだと思います。
スギちゃんの一日も早い回復と、
テレビ局の猛省を期待したいと思います。
微笑亭さん太