残量感がたまらない
『百里を行く者は九十里を半ばとす』という言葉があります。
『百里の道を行く時は、九十里を半分と考えよ』という意味に取られていますが、
本当は『九分通りのところで気を引き締めなおせ』と、
より厳しい意味なんですね。
要は油断は禁物という事であり、
油断してると、せっかく九十里進んでも、
あと九里進んだ時点で、みんな『千葉の海岸』に戻っちゃいますからね。
…判らない方は、足し算していただきたいですね。
学生時代、苦手な教科の授業は
やたら長く感じるという経験は誰もがされてると思います。
もうじき終わりかな~と思って時計を見るんですが、
想像してたより時間が経ってなかった時の
ガッカリ感は異常なものがありますよね。
最近の研究で、
授業中に残り時間を示すと、生徒の疲労感が軽減され、
やる気が少し湧いてくるという事が判ったようですね。
『疲労』と『意欲』の関係を研究する
『理化学研究所分子イメージング科学研究センター』という、
やたら長たらしい名前の研究所のグループの実験結果なんですが、
二つの感情に影響する脳の働きが明らかになったという事ですね。
男女17人に、パソコン画面に次々と数字を表示して、
記憶力を試す課題を45分やらせると同時に、
残り時間を計25回画面に示したんですね。
すると、残り時間の提示によって、『意欲』を感じる、
脳の側坐核(そくざかく)の血流が活発になり、
『疲労』を感じさせる眼窩前頭野の活動が低くなる事が判ったんですね。
つまり、残り時間を知る事は
明らかに有効だという事が証明されたわけでして、
『時間なんか見るな!終わる事なんか考えるな!』という、
根性主義大好きの日本人にとっては画期的な事ですよね。
でもまあ、『期間や回数を区切る』というのは、
人を頑張らせるコツのひとつである事は間違いないですよね。
人を待たせる場合でも『しばらくお待ちください』と言うだけでは、
漠然としていて、延々待たされるイメージを抱かせてしまいますが、
『しばらくお待ちください。5分以内に戻りますので』と言い添える事により、
安心感を与えられ、待つという行為の負担を大幅に軽減させられますからね。
『しばらくお待ちください。4分52秒前後で戻ります』くらい言えば、
笑いのハードルが低い人なら、ひと笑いくらい取れそうですしね。
ですから、会社の始業時間に
『今日の仕事も、あと480分だ!』と言えば、
一日意欲がわきっぱなしという事ですよね。
この実験結果を受けて、学校の授業や病院のリハビリで、
集中力が続かない生徒や患者さんに応用する事が考えられているようですが、
そういう方々には、一人一人タイマーを持たせて、
違う時間の表示をした方が有効かもしれませんね。
授業の集中力が続かない生徒がタイマーを見ると
『進学までの時間』がどんどん増えていったり、
リハビリをサボる患者さんがタイマーを見ると
『余命』がどんどん減っていけば、『これは真剣にやらねば!』と、
緊張感が生まれると思うんですけどね。
微笑亭さん太